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みんな死んだ

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友達はみんな死んだ。
ゼロ月ゼロ日、Xデー。
「もしくは×だよね」
小さな丘の上でシャボンだまを飛ばしている。
下から手を降ってくる奴がいた。
気味が悪いな
いい気持ちだな
どちらも両手に抱え込んで
花束を作って走って駆け込んできた。
「おじさん死んだって!」
大ニュースみたいに
店番してて、爪を切っていた。
猫としか話したくない気分だった。
「猫になって出なおせ」
といってレジの上の臭すぎる新聞を読んだ。
「エックスデー
今年も!?」
腹が立って火を付けた。夏だった、店は焼け落ちた。
いいんだ、何軒でも増殖するんだから。
「それじゃあなんで泣いてるの?」
「うるせえ」
そいつを壁にたたきつけた。
「太陽が白くはげしすぎて、なんでもない町なのに迷宮みたいに歪んで見えるね?」
「なんで汗をかきながら、そんなに嬉しそうなんだ」
「うちくる?」
麦茶とバラエティ番組を恵んでもらった。
「卑怯だぞ、液晶なんて」
「ブラウン管にかえようか? きみが望むならそうしてあげてもよいぞ?」
鼻っ面に麦茶をぶっかけた。
大笑いしていた。手足をばたばたさせて、
「この手足を縛って切断してくれー!」
と天井に向かって叫んだ。
「本気でそう思ってる?」
「はあ?」
「天井なんかに話しかけるわけないでしょ?」
醒めた声だった。
自分は知らぬまに正座してうなだれていた。
今度はあっちがこのうなだれた頭へ水をぶっかける番だった。
何らかの蜜までかけられた。
無限に虫が湧きだした。
自分の体にこんなにも生命が宿っていたなんてと嬉しくなった。生きた価値があったと思った。
あいつはそれを全部火で焼いた。
「仕返しか」
一部始終を小さな猫のような犬のようなのが見ていた。
思い返したときその動物はとにかくあいつのそばにいたようだ。
照りつける青空太陽の下無様なプロポーズをしたときも
さくら舞うあいつがセーラー服を着て薄く微笑み学校へ向かってあるいていたときも
しっぽで歯を磨いていた。
この動物が本来この姿をしていない生物だということは明らかだ。
それを知らせるためにわざわざ雑踏のなかに膝を着いて大声で身振り手振りまじえて説明した。
小動物はそれもかわい無表情で見ていた。
通りすがりの赤ん坊抱えた女が抱き上げたのは小動物の方だった。
多くの人間には小動物は微笑んでいるように見えるのだ。
俺が鏡の前で笑顔を作っても日に灼かれて腐り死んだキャベツにしかならない。
深夜笑顔の練習をしているときも小動物は後ろでちょこんと見ていた。
「おまえいい加減帰れよ!」
首根っこを掴んで間近で叫びつけた。
「ハロー」といってドアが秋、しっぽの二股に分かれた白い小動物仲間がいた。
口は完全に閉ざされたままだったが「ハロー」という言葉がわかった。
おれは完全に精神に失調をきたしている。
誰がこんなことにしたのか。
子供の頃おれを猫じゃらしで誘いだして散々小屋で犯した後透明な小便とガムを俺の死体へふっかけて社会の窓を閉じ、口笛を吹きながら小屋を出ていったおっさん。
ずっと疑問だった。
なぜあんなおっさんの小便が透明だったんだろう?
おれの小便はまごうことなく黄色なのにおかしいではないか?
来る日も来る日も中学に入ったら図書室が大きくなっていたのでいろんな本で調べ続けた。
本好きと思われて話しかけられて付き合うようになった女子とセックスをしなかった。
あの女子もそうだった、おれをはだかにして広い教室の床に寝かしてなんか透明なぬるみのある液体を股間に重点的にかけた。
他にも二三人女子がいて、主に笑顔でおれのことを観察していた。
「いいじゃんよー女子にきょうみもってもらえるだけ」
「じゃあお前が買われ、おれの皮をお前がかぶれ」
その会話をしていたのは廊下で、通りすぎたところにまだいる女子たちがきゃーと声を上げた。
「おれの包皮をお前がかぶれという意味に取ったらしいぞ」
「この世は狂っている!」
「そんなの生まれたときからわかってたろ。あの世はもっと狂ってるよ」
「勘弁してくれよおおおおお」俺は頭を抱えてしゃがみこんだ。
「しょんべんしてくれよ~」友達はおれの頭へ排尿した。
ついてきた女子たちがおれたちを取り囲み拍手をし、飴などのお菓子を投げた。
友達は後頭部に手を当ててへこへこと照れている仕草をした。
なんでもいいのかこの野郎。
俺は友達の腹に怒りの拳を叩きこんだ。それはとても弱く、友達は難なくそれをつかんでおれの拳をべろべろ舐めた。
不覚にも感じた。
それもそのはず、友達は幼い頃から近所のマダムたちに体を売っていたからだ。
へへへ。
男子のブリーフにしても女子のパンツにしてもそうだが、白というのが穢れ無き色で、色がついたら何かしら不純だ。
いつも白衣を着て登校している女子が、なんか長い棒みたいのでおれの乳首をつつきながらそう講釈を垂れた。
鼻くそをほじりながらいかにもきょうみなさそうに聞いていたおれの脳内はものすごく感動して吐きそうだった。
脳みそを嘔吐しそうだった。
作品名:みんな死んだ 作家名:遠野葯