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てっしゅう
てっしゅう
novelistID. 29231
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「もう一つの戦争」 開戦と子育て 1

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「ええ、山本様には何とお礼を申し上げてよいのかわかりません。磯村様がお役目をしっかりと果たされるように仕えたいと思います。わたくしにはいま家族が居りません。結婚したら磯村様のご両親様が親となります。仲良くさせて戴きますのでよろしくお伝えください」

「ありがとう。おれの両親はきっと喜ぶよ。息子ばかりでそれもみんな兵隊に行っているから裕美子さんをきっと娘のように可愛がると思う。安心してください」

「ありがとうございます。とても安心いたしました」

裕美子は自分の数奇な運命にこの後翻弄されてゆく・・・

昭和十六年四月の終わりに裕美子は磯村幸一に嫁いだ。中国、満州での戦線拡大に徴兵は厳しくなり兵力増強のために学生の繰り上げ卒業が検討され、年内にも決定を見る状況になっていた。確実に戦争の前触れが世間にも伝わるようになってゆく。
大都市部ではコメの配給制度が開始され、大人一人当たり一日二合三勺(にごうさんしゃく)と普通に食べていた量の約八割程度に制限された。