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レイドリフト・ドラゴンメイド 第6話 主人公はいつもクミ

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 そして一度大きく息を吸うと、その姿が揺らぎ、やがて消えていった。
 また、誰かを連れに行ったのだ。

 そこは、ボルケーナ内部のパーティー会場だった。
 天井からは、太陽光を光ファイバーで引きこんだ巨大なシャンデリアが、こうこうと輝いている。
 壁は外からも見えた、白地に金の錦織。
 運転席側の壁には、壁一面を覆う巨大な液晶ディスプレーと、巨大なスピーカー。
 その前には広い舞台があった。
 ふかふかの絨毯はペルシャ製のそれを思わせるもので、赤い地の中に様々な自然物が幾何学的に織り込まれている。
 だが、素晴らしい光景だった面影はそこまでだ。
 並んでいたテーブルはいつの間にか端により集められていた。
 あわてて寄せたためか、テーブルクロスには皿からこぼれたソースなどが飛び散っている。
 空いたスペースには逃げてきた大勢の人たち。
 外からは閃光、爆発音。
 そのたびに、おびえる人々とシャンデリアが揺れる。
 そして、ボルケーナに人の姿を与えられた3種族が、呆然と外を眺めていた。

「ユニバースさん! クミちゃんと一緒にいてあげてください! 」
 立ち上がるユニに突然、知らない男が声をかけた。
 だが、ユニはその男をどこかで見たような気がした。
 ゴリラのようにがっちりした体躯は、スポーツ選手を思わせた。
 そして、逆立つ短い黒髪……。
「あなたは、米入ティターンズの杉井 おかき選手?! 」
 クミが好きな野球選手だ。おかきは、うなずいた。
「クミちゃんは、あなたを迎えるために、一層懸命に頑張ってここに踏みとどまったんです! 」
 もう一人。こちらも体格がいいが、おかきよりはほっそりした男性。
 長い髪を輪ゴムでポニーテールにしていた。
「あなたは? 」
 ユニの質問にクミが、うれしそうに答えた。
「サッカー選手の、五浦 和夫さんだよ! ママ!!」
 クミにとっては、夢のような光景だ。
 3人とも、そろいの黒い革製ジャケットを着ている。
 襟に白いふわふわした毛のついた暖かい物だ。
 その左胸と背中には、白く勢いのある毛筆体で、TOP・ON・THE・WORLDと書かれていた。

「いやはや、勇ましいお坊ちゃんですな」
 再び、声をかけられた。
 相手は、黒い高級そうなスーツを着た、中年男性だ。
 気付けばユニ達の周りには、サブマシンガンや分厚い防弾盾を構えた黒服の男女が取り囲んでいる。護衛警察官、セキュリティ・ポリス、通称SP。
 話しかけた男は内閣総理大臣、前藤 真志だ。
 彼の声は怒る感じはしないながらも、その顔には、無数のひっかき傷があった。
 おかきと和夫の革ジャケットから出た手もそうだ。
 爪のひっかき傷と共に、咬み跡が残っている。
 ユニはクミとの親子喧嘩のたびに散々見た物だ。
 ユニはクミに頭を下げさせ、自分も平謝りした。

「そんな事より、早く我々を非難させてください! 」
 おかきが指差す先は、会場の奥。
 そこには、人一人入れる大きさの、分厚いドアが並び、次々に人が入っていった。
 表面は壁と違和感がないような豪華な装飾が施されている。
 だが裏は、平面でクリーム色に塗られていた。
 ユニには、荒波にも耐える漁船のドアを思い出させた。
 クミの首根っこをつかんだまま、そこへ向かう。

 会場に再びキャロが現れた。
 今度は一磨を連れていた。
「もうだめ。もう限界」
 汗だくになり、倒れ込んだキャロに、一磨が肩をかした。 

 身長5メートルほどの巨人が外からやって来た。
 白い肌と赤い髭。魔術学園の制服が、破れることなく角ばった筋肉に張り付いている。
 巨人体となったティモシーが、コンクリートブロックのようになった顎を動かすと、とてつもなく低い声が響く。
「近くにいた父兄は、これで全部だ」
 ティモシーが胸に抱いていた、スバル・サンクチュアリ似の夫と、おなかの大きな妻の夫婦を床に下した。
 ティモシーの体が縮む。すると伸縮自在の制服も縮み、見慣れたいつもの姿になった。
 そして、ドアをくぐった。

「あなた達も来なさい! 死にたいのか!? 」
 真志総理が未だに呆然とする3種族に叫んだ。
 もう会場には、3種族と総理、SP、和夫とおかき、ユニとクミ親子だけになった。
 だが呼びかけられた彼らは、顔を引きつらせ、そして。
 グシャグシャっと音を立て、凄まじい圧力に負けたテーブルが、ドアへの道をふさいだ。
 熱い炎が、地球人達に襲いかかる。
「何しやがる! 」
 和夫が叫んだ相手は、鉄の羽を持つ地中竜だ。
 彼らはその羽の筋力と内側から出るジェットの火で、テーブルをまとめて薙ぎ払ったのだ。

「し、信用できぬ……」
 地中竜は、絞り出すようにして答えた。
「そうだ。お前達も人間だ。チェ連人も人間だ。戦いあう人間をどう信じられる? 」
 背中に結晶体を背負う海中樹も、おびえきっている。
 天上人達も、同じ顔で恐れおののいていた。
 それに対して、総理の答えは。
「それもそうか。自衛隊の最高指揮官は私だからな。
 では私ではなく、彼らを信じるのはどうだろう? 」
 そして、おかきと和夫たちを指さした。
「彼らは自衛官でも魔術学園でもない。トップ・オン・ザ・ワールドというNGO……利益を求めない慈善事業団体だ。
 目的は、命にかかわるような病気やけがを抱えた子供たちの夢を、世界一流の技術を持って実現する。
 そうすることで、生きる願いを奮い立たせることを願っている」
 おかきが、説明を引き継いだ。
「今回は、先天性四肢欠損症、生まれつき手足のない女の子からの要望です。
 クミ君をお母さんの迎えに送ってあげて欲しい。
 一緒に行ってほしい人がいるなら、その選定は彼に任せる。
 そして、その目で人を召喚する異世界というものを見てきてほしい。
 そういう内容です」
 和夫が、ユニに振り向いて言った。
「そのクライアント、どうやらあなたのファンらしいですよ。
 会ってもらえないでしょうか?
 トップ・オン・ザ・ワールドは一回しか利用できないから、個人的にということになりますが」
 ユニは、「ええ。帰ったら、ぜひそうさせてもらうわ」と答えた。

「な、何を言っているのか、さっぱりわからん。
 スパイに来たという解釈でいいのだな!? 」
 そう言って、足を踏み鳴らし近づいてくるのは、天上人だ。
「な、なんでそうなるの!? 」
 自分たちの意思を踏みにじる厳しい解釈に、ユニは怒りに震えた。
 その振動が、床をびりびりと揺らす。

 地球人達には、まだ言いたいことがあった。
 所が、ブッブーと車のクラクションが聞こえた。
 地球人達は、車が通ると思い、後ろに下がってスペースを開ける。
「臆したか! 」
 だが3種族は、さらに地球人に近づいてくる。
 その怒る目には、地球人しか映っていなかった。

 ギギギ! ズザザザザー!
 坂のレッドカーペットが凄まじい爆音とともにむしれる音がした時、初めて黒い大きな車が駆けあがってくるのに気が付いた。
 黒い車は一目で装甲車とわかる、角ばった形をしていた。
 正面からの銃撃をそらすため、金属の板を溶接した形だ。