小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

クッキー

INDEX|1ページ/4ページ|

次のページ
 
勇者「兵士ちゃん、今日こそ料理を食べてもらうYO!」

賢者「わたしも今回は頑張っちゃいましたっ」

兵士「いらねえつってんだろ。お前らの頑張りって、いつも方向性がズレてんだろうが!」ビシッ

勇者「ちっちっち、決めつけるのはまだ早いZE!
今日はなんとぉ、水竜のキモとサラマンダーの舌と」

兵士「ほらな。だから」

賢者「それらを使うのをぜーんぶ我慢して、クッキー作りましたっ」ジャーン

兵士「……ん?」

勇者「タマゴと小麦粉と、砂糖と牛乳とマーガリンで作ったんだYO!
初めて使った食材に、勇者タジタジッ」

兵士「……そのタマゴってのは、サラマンダーのタマゴとか言い出すんだろ」

賢者「違いますよお、にわとりのタマゴですですっ。コケコッコーってなく。
あんな竜はじめて見ちゃいましたっ」

兵士「竜じゃねーから。……お前らとうとう狂ったんだな」

勇者「アッハッハ、その反応はあんまりジャマイカ?地獄の業火も石化の呪詛も、全部我慢したんだYO!」

兵士「…………なんでだよ。お前らのポリシーなんじゃないのか?
俺への嫌がらせをするっつう」

賢者「そんなわけありませんですよお。兵士さんが食べてくれるなら、なんだって作っちゃいますですっ」

勇者「でも、こんなに手間取ったのは初めてだけどNE!
クッキーの形、なんなんのか分かんなくなっちゃったYO!」

兵士「……俺だろ」

勇者「……!」

兵士「まったく、馬鹿馬鹿しいことしやがって。
お前らの料理なんか食わねえって言ったろ。
媚びるような真似すんなよ」

賢者「……今日、おたんじょうびなんです」

兵士「は?」

勇者「…………アハハハッ!化け物にも誕生日はあるんだZE!意外だNE!」

兵士「……」

賢者「……」

勇者「……」

兵士「……ほらよ」ポイッ

勇者「……?」パスッ

兵士「知ってんだよ、お前らの誕生日くらい。
だから、テキトーに買っといた」

勇者「な……!なんで知ってるんだよ……!」

兵士「あー。ま、お前らの情報は色々と聞かされてたからな。
誕生日なんて好意的な言葉じゃなかったけど、日付はバッチリだわ。
アイマスク買ってやったから、それつけて寝ろ」

勇者「……」

兵士「あ、でもお前目隠しされてたんだったな。
それならアロマキャンドルとかの方が良かったか?
安眠グッズとかよくわからねえんだわ」

賢者「なんで……安眠グッズなんです?」

兵士「お前らがいまだにうなされてっからだろ。
ちゃんと二人分買っといた。出来るだけ肌触りのいいやつな」

勇者「……バカだ……兵士ちゃんは本当にバカだYO!」

兵士「そうだな、もうちょっと考えて買えば良かっ」

勇者「違うYO!こんなのフェアじゃNOTHING!兵士ちゃんの誕生日も教えろYO!」

兵士「は?わりーけど覚えてねえわ」

勇者「……ッ!」

賢者「……じゃあ、今日を誕生日にしちゃえばいいですよっ。ねー勇者サマ」

勇者「えっ……」

兵士「おお、それいいな。それだったら忘れねえだろ」

勇者「そんなの……そんなの……ズルいYO!今日はなんにも用意して……」

兵士「じゃあ、そのクッキーよこせ」

勇者「……!」

兵士「仕方ねえから、今日だけ食ってやるよ。それでおあいこだ」

勇者「…………もぉう!兵士ちゃんなんて大嫌いだ!」

兵士「言ってろ。ほら、さっさとよこせ」

勇者「……」

兵士「いいのか?」

勇者「くそっ……」


スッ


兵士「はーあ、本当に食う日が来るとはな……仕方ねえ」バクッ


ガリガリ


勇者「……」

賢者「……お、おいしいですか?」

兵士「……普段料理してねえやつが作った味だわ。歯応えもありすぎだな」ガリガリ

勇者「……アッハッハ!オレ達お料理のプロなのにNE!どうしてかな賢者ちゃん!」

賢者「小麦粉を入れすぎたかもしれませんっ。それにバニラエッセンスも入れ忘れたことに、いま気がつきましたっ」

勇者「マジかYO!」

兵士「おお、マトモな会話。お前ら本当にあの二人か?
……でもうまいよ」ニコッ

勇者「はうぅっ!」ドキッ

賢者「お、おかしいですうっ。魅了はとけてるはずですうっ」ドキドキ

兵士「なんだよ。なんで胸おさえてるんだ?」

勇者「賢者ちゃん、これはやっぱり……」

賢者「そうですね……勇者サマ。これはぜったい」

二人「初恋……!!」

兵士「ふざけんな。もう寝るからついてくんなよ」スタスタ

勇者「ちょっと待てよ!愛の告白聞けってば!勇者の料理食べたじゃないかぁ!」ガシッ

兵士「離せバカ。食べたからなん……」ピタッ

賢者「どうしました?」

兵士「お前らまさか……いや、まさかな」

勇者「……そのまさかだけど?」

兵士「…………あー、くそ。最初からそういう意味だったつうことか?」

賢者「うふふっ、あたりまえじゃないですかあ。料理をたべさせれば、ふたりは結ばれるんですっ」

兵士「んなの、魔界の常識だろうが!」ビシッ

兵士「性欲と食欲が一緒くたな魔物の間でしか通用しねえんだぞ。人間はそう単純じゃねえんだよ」

賢者「えー。人間だって「毎日お前の味噌汁が飲みたい」とか言うじゃないですかあ。
それって「結婚して」って意味のはずですっ」

兵士「偏った知識は捨てろ。忘れろ。もうついてくんな」スタスタ

勇者「待てよ!兵士ちゃんのこと好きなんだ!その気持ちは分かるだろ!?」

兵士「……」スタスタ

賢者「私もです。兵士さんのこと好きなんです。ずっと一緒にいたいんです!」

兵士「……」スタスタ

勇者「兵士ちゃん!」ガシッ

兵士「……」ピタッ

勇者「……」

賢者「……」

兵士「……あー、本当にバカだな。だからガキだっつうんだよ。
お前らの料理なんかで引き留められるとでも思ってんのか?」

勇者「え……」

兵士「あんなもんで引き留められてたまるか。
普段は食いもんじゃねえし、クッキーだってガリガリだしよ。
けどな」
作品名:クッキー 作家名:オータ