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みやざきしんいち
みやざきしんいち
novelistID. 56782
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家族旅行

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先にゲートを通過した男性は、家族が搭乗口へ向かおうとしないことに苛立っていた。

「おーい、早くのれよ」

夏休みのヨーロッパ行きの飛行機に家族連れで乗る。父親としてはちょっとしたイベントに違いない。
この搭乗口さえ通過すれば、飛行機が飛びパリに向かう。

家族のひとり、息子くんが搭乗口で立ち往生した。パスポートがないらしい。

一緒にいた母親も慌てる。

「なにしてるのぉ、パスポート?ちゃんと探しなさい」

息子くん、なかなか見つからない。焦る。

職員が気を利かせて、

「横のソファーでゆっくり探してください。お時間はありますので。」

と言ってみたものの、職員たちは内心ほんとに見つからなかった時の対応を、頭のなかで計算する。

「ないの?いやだねぇ」

おかあさん、焦れる。

「最後はどこで見たの?出国してきたんだから、まったくもう」

母親の詰問に息子くん記憶が戻ったかのように

「免税店で…」

と口ごもる。

「おとうさん!免税店で一緒にいたでしょ!パスポート!どうしたの?おとうさんのそのバッグの中に入っているんじゃないの?もー」

お父さん、風向きが悪くなってきた。慌てて、手に持っていたバッグを開けてゴソゴソしはじめる。

「ないよぉ、免税店に置いてきちゃったんじゃないのか?」

お父さん、責任のがれるのに懸命である。

「もー、こんなときに、役に立たないんだから、おとうさんはまったく!」

わからないではない。家族3人で欧州一週間。場合によっては100万円の旅行だ。搭乗口直前で、その旅行と代金がフイになりかねない。

おと、その時、かあさん、突然慌て始めた。

「あらっ!」

おかあさんは、着ていたジャケットのポケットをゴソゴソしはじめる。

「あったわ!あったー!」

なんと、パスポートはお母さんのコートのポケットに「最初から」入っていたのである。

おかあさんは、そそくさと機内へと入っていった。
作品名:家族旅行 作家名:みやざきしんいち