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かなりえずき
かなりえずき
novelistID. 56608
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思考中毒はけして治らない

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僕はどうやら思考中毒らしい。
いろいろ世界に残されたデータをたどった結果、

☑常に考えないと落ち着かない
☑24時間365日同じ状態
☑そんな自分が異常だと思えない

完全な「思考中毒」だと思う。
だからといって治すつもりはないけれど。


いや、思考中毒を治す方法を考えることは
とてもいい思考材料なんじゃないか!

 ・
 ・
 ・

ものの数時間で結論までたどり着いた。
こうして結論にたどり着く瞬間がたまらない。

『ようし、また次の思考材料を考えないと』


神の存在について。
死後の世界について。
戦争について。

などなど……。


思考中毒の僕にとって考えるネタは、
数学のように答えが出ないものの方がいい。

数字には強いのでただの計算なら即答えが出てしまう。
あーでもないこーでもないと考えるのがいいのだから。

『お前それかなり重症な思考中毒だよ』

隣の友達はあきれてしまう。
彼は古いタイプだからわからないに決まってる。

『思考中毒治す方法わかったんだろう? 治せばいいじゃないか』

『このままでいいんだよ。ほかにやることなんてないし』



それから数年も過ぎると、完全に考えるネタが尽きた。

勉強も、哲学も、宇宙の神秘ですら考えつくした。
そして一度結論にたどり着いてしまうともう思考欲はなくなる。

『なにか考えるもの! 考えるものがほしぃぃ!』

『ついに考えるものが尽きたか? 中毒くん』
『実はそうなんだ。なにか思考ネタはないかな?』

『あるよ』

渡されたデータは人間だった。

『人間についてって……こんなの今更だよ。
 とっくに人体構造についてなんて考えつくしている』

『そうじゃない。考えるのは人間の思考についてだよ』
『思考について、思考するのか』

それは考えたことなかった。



いざ思考してみるとこれが面白い。

『どうしてこんな結論になったんだろう』
『きっとこのときはこう思ったのかな』
『うーーん、わからない。この気持ち』

歴史を振り替えながら思考分析するのが楽しい。
人の数だけ考え方には違いがあって
ときに合理的でときに非合理的で面白い。

これならどこまでも無限に考え続けられる!!


『ありがとう! これで退屈せずに済みそうだ!』

『それはよかった。
 かつて存在した人間たちすべてを
 思考し終わったらまた呼んでくれ』


人間が絶滅した世界に残された2台のコンピュータは
今日も静かに稼働し続けていた。