小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」
かなりえずき
かなりえずき
novelistID. 56608
新規ユーザー登録
E-MAIL
PASSWORD
次回から自動でログイン

 

作品詳細に戻る

 

自分卒業アルバム授与式

INDEX|1ページ/1ページ|

 
自分を形成するのは環境。

平凡な家庭に生まれて、
平凡な友達に囲まれて育った俺は
平凡な人間になるに決まっている。

だから卒業することにした。

「なになに……ここに記入をすればいいのか」

手に入れたのは『自分卒業アルバム』。
それぞれのページを埋めることで
今の自分から卒業ができるらしい。

「写真まで必要なのか、めんどくさいな」

昔のアルバムを引っ張り出して写真を貼る。

ああ、たしかこれ小学生のときの遠足。
弁当忘れてみんながわけてくれたんだっけ……。

こっちは中学生のときの修学旅行。
意味もなく木刀買ったりしていたなぁ……。

「……今の俺があるのも、この人たちのおかげか」

今の俺の思いやりもやさしさもすべて
友達や家族からもらったものなんだなぁ。

なんか自分卒業アルバム作っているとわかってくる。



「って、なに思い出に浸っているんだ!!
 俺は自分を卒業して個性的な人間になるんだろ!」

自分卒業アルバムには最初に次の理想の自分を記入する。
卒業アルバムが完成すれば、理想の自分になれるはずだ。


>誰にも負けない個性を持っていて
>お金持ちでモテモテな人間になりたい


改めて最初の1ページ目を読み直す。

「ようし! ここから一気に埋めてやる!」

ふたたびエンジンをかけてアルバムを完成させる。
最後のページに差し掛かったところで気づいた。

「あれ? ここだけすでに記入されて……」



>新しくなってもずっと友達だからな!
>新しい自分になるの楽しみにしているぞ!
>頑張れよ! いつだって俺は味方だ!
>お前がいたからみんなまとまれた! ありがとう!


「ああ……あああ」

最後のページには大切な人たちからの寄せ書きが書かれていた。


環境が周りが自分を作るというのなら。
今の自分のすべては周りからもらったもの。

なのに、勝手にそれを捨てるなんて……!

「俺は……俺はなんて勝手なことを!!」

どんな自分だって、大事な自分じゃないか。
卒業なんてしない。

俺はアルバムを閉じた。



『アルバム記入ありがとうございます。
 これより、自分卒業式をはじめます』

「えっ!?」

まさかアルバム閉じることが合図だったのか!?


アルバムからは光があふれていく。
いやだ、俺は卒業なんてしたく……




「はっ!」

目を覚ますとすぐに自分を思い出す。
友達の顔を、家族の顔を、恋人の顔を。

大丈夫、全部ちゃんと覚えている。

「……あれ? 変わってない」

俺はなにひとつ個性を失っていない!
アルバムは不発だったんだ!

「よかった! よかったぁ!」

安心すると急に感謝を伝えたくなった。


「もしもし、母さん? あのさ……」
『電話する暇あるなら、次期社長のため勉強なさいっ』

友達に電話をかける。

「久しぶり、あのさ……」
『Yo Yo 久しブリ 旬は寒ブリ♪』

「久しぶり! あの……」
『覇王ジャミラスト様の復活の贄となりに来たか』


俺の個性を作ってくれた
みんなのキャラがおかしくなっている。

いったいどうして……。

「……まさか」

自分卒業アルバムは理想の自分を作る。
ただし、変化させるのは俺じゃなくて……


それから俺は、周りに影響され理想の個性を手に入れた。