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The SevenDays-War(黒)

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 少女を見れば、弱々しいながらも呼吸を行っていた。外見的な変化は特に見受けられない。
 ルドラはそれを確認すると、ニヤリと笑う。
 この少女の近くで人間を殺せば、魔界の扉が開く。扉の開放は恒久的なものではないが、一度につき“神の敵”を少なくとも一人は呼び出せる。
 ルドラはそう認識する。それ以上は、いまは必要ない。
 ルドラは黒剣の切先を少女の焼け爛れた下腹部に当てた。その部分の魂を黒剣に吸収することで、火傷による痛みを取り除いたのだ。
「まだ死なれては困るからな」
 ルドラは天へと駆け上る。
 実体化が終わりつつある“神の敵”と戦うために。

 そして、ルドラが千年の間ずっと求め続けていた、心躍る互いに命を賭した戦いが始まったのだ。


 ガルガント山脈の強制収容所にいた人間の数は、総勢三十六名。その中に二人の少女は含まれていない。
 最初に頭をかち割られて死んだ囚人を差し引いた数、三十五。
 ルドラはその数だけ『神の敵』を召喚し、そのすべてと戦った。中にはかなり手強い相手もおり、それなりに満足できる時間ではあったが、それは三十五の内に、数えるほどしかなかったのも事実だった。

 人間の寿命は短い。“次”を用意しておく必要がある。
 そう考えたルドラは、予定通りにサンクという人物について調べることにした。
 ルドラは宿場の遊女との約束を思い出す。稲光のように空を翔けることができる黒天馬の脚ならば、いまからでも充分に間に合う。
 西日が三十七の死体を照らす。
 聖教会の司祭ならば十字を切り冥福を祈るのであろうが、この世界の神が死者の魂に救いなど与えないことを、ルドラは知っていた。
 結果的に人間にとっての救いとなっていたとしても、当の神には救いを与えたつもりなどは一切無いのだ。
 それが救いであると刷り込むために、聖教会の教えを人間に伝え、その組織を存在させている。

「せめて世界の糧となれ」
 ルドラは皮肉を込めて十字を切った。

 太陽は西の大地に飲まれようとしていた。
作品名:The SevenDays-War(黒) 作家名:村崎右近