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月とコンビニ
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あめとおちる

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『あめとおちる』
○男子生徒
○女子生徒
○教師

教室。雨音、雨のにおい。
天井から無数のセロテープが伸びている。
男子生徒が窓の外を眺めている。教師は生徒の机の一つに座り、紙の束に目を通している。
女子生徒は床に座り、鉛筆削りで鉛筆を削っている。

教師   (なにかをしゃべっている)
男子生徒 うっす。
教師   (なにかをしゃべっている)
男子生徒 うっす。
教師   (なにかをしゃべっている)
男子生徒 うっす。
教師   (なにかをしゃべっている)
☆男子生徒は教師から紙の束を受け取る。
男子生徒 うっす、あっした。
      ☆男子生徒は落ちていた傘を拾い、さす。雨音が大きくなる。
男子生徒 ぬれてるよ。
      ☆女子生徒は気づかない。
男子生徒 ぬれてるよ。
      ☆女子生徒が気付く。
男子生徒 ぬれてるよ。
女子生徒 ほんとだ。
      ☆女子生徒は落ちていた雨がっぱを拾い、きる。
女子生徒 ありがと。
男子生徒 何してた?
女子生徒 旅行の計画。
男子生徒 そっか。
女子生徒 うん。
男子生徒 たのしい?
女子生徒 ううん。
男子生徒 そっか。
女子生徒 うん、そっちは?
男子生徒 ん?
女子生徒 何してた?
男子生徒 帰るとこ。
女子生徒 そう。
男子生徒 ああ。
女子生徒 そう。
男子生徒 ああ。
      ☆間。
男子生徒 それじゃ。
女子生徒 さよなら。
      ☆男子生徒は傘を閉じようとして、手を止める。
男子生徒 はじめまして。
女子生徒 うん、はじめまして。
      ☆男子生徒が傘を手から落とす。
男子生徒 あ。
教師   おい。
      ☆男子生徒は、女子生徒が削った鉛筆で紙の束に何かを書きだす。
女子生徒 ん?
教師   ここには入るなって言ったろ。
女子生徒 うん。
教師   風邪ひくぞ。
女子生徒 うん。
      ☆間。
教師   おい。
女子生徒 先生。
教師   あ?
女子生徒 ずっと待ってんの。
教師   ああ。
女子生徒 勇気出ないや。
教師   そうか。
女子生徒 そう。
教師   出さなくていいんだよ、んなもん。
女子生徒 うん。
教師   今日はもう帰れ。
女子生徒 うん。
教師   止まないぞ。
女子生徒 うん。
      ☆雨音に耳を澄ます。
女子生徒 男の子にあった。
教師   そうか。
女子生徒 うん。
教師   よかったな。
女子生徒 うん。
      ☆男子生徒が紙の束を持って立ち上がる。雨音が小さくなる。
男子生徒 はよう。
女子生徒 うん。
      ☆男子生徒は女子生徒とすれ違い、教師のもとへ行く。
男子生徒 うっす。
      ☆男子生徒が教師に紙の束をわたす。
教師   …。
      ☆教師は生徒の机の一つに座り、紙の束に目を通す。
      ☆間。女子生徒は、地球儀をくるくるとまわしている。
      ☆男子生徒は黒板を眺めている。
教師   (なにかをしゃべる)
男子生徒 うっす。
教師   (なにかをしゃべる)
男子生徒 うっす。
教師   (なにかをしゃべる)
男子生徒 うっす。
教師   (なにかをしゃべる)
      ☆男子生徒は教師から紙の束を受け取る。
男子生徒 うっす、あっした。
      ☆男子生徒は二、三歩あるいてから、紙の束を地面にたたきつける。
      ☆散らばった紙もめちゃくちゃにする。女子生徒、教師、その様子を眺める。
      ☆女子生徒が散らばった紙の一枚を拾う。
男子生徒 あ。
女子生徒 あ?
男子生徒 いや。
      ☆女子生徒は座り込み、紙に目を通す。
      ☆男子生徒は女子生徒との距離を感じながら、少しずつ近寄っていく。
女子生徒 なに?
男子生徒 となり。
女子生徒 うん。
      ☆間。男子生徒は座り込み、地球儀をくるくるまわす。
男子生徒 旅行、海外?
女子生徒 わかんない。
男子生徒 そっか。
女子生徒 いきたいの?
男子生徒 いや。
女子生徒 ここにいるの?
男子生徒 わかんない。
女子生徒 うん。
男子生徒 わかんない。
女子生徒 わかんないね。
男子生徒 ああ。
女子生徒 いきたくないし、ここにもいたくないなあ。
男子生徒 え?
女子生徒 そう思っていつも立つの。
      ☆女子生徒が持っている紙のしわを伸ばして、男子生徒にわたす。
女子生徒 はい。
男子生徒 ああ。
女子生徒 へたっぴい。
男子生徒 そうかな?
女子生徒 うん。
男子生徒 …。
女子生徒 高慢ちきで、自尊心いっぱいで、欲望と焦燥と衝動でごっちゃごちゃで…。
女・教  でも。
女子生徒 私は好きだな。
      ☆間。
女・男  ぬれてるよ。
女・男  ほんとだ。
女・男  ありがと。

雨音が大きくなる。
男子生徒は落ちている鉛筆を拾うと、すごい勢いで紙に何かを書き始める。
女子生徒は床に散らばった紙を拾い上げては、階段のように、段々と高く、天井から伸びるセロテープに貼り付けていく。
教師は、女子生徒から目をそらす。自分の無力をかみしめる。
男子生徒、女子生徒の笑顔を想う。
女子生徒、手が届く限界のところまで紙を貼ると、明るい表情で落ちていく。
雨は止まない。
作品名:あめとおちる 作家名:月とコンビニ