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きんぎょ日和
きんぎょ日和
novelistID. 53646
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母の日~メダカさんたち…。~

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旦那さんが出張のため、急遽お母さんちへと一ヶ月ほど帰った。
帰る日が五月ということもあり、母の日が入っていたので、何かないかと旦那さんとあれやこれやと日々ご相談をしていた。
そして、行き着いたのがメダカだった。
お母さんは二十年以上メダカを育てているので、変わったメダカなら喜ぶと思い配達してくれるメダカ屋さんにネットから注文した。
出目ちゃんメダカ×三匹・パンダメダカ×六匹・青メダカ×十二匹。
もちろんそんなことはお母さんには内緒で…。

そしてお母さんの所へ帰ったその日に、先ずは、
『お母さん、今日母の日だから、これあげる。』
と私は袋をお母さんに渡した。
お母さんは驚いて袋を開けた。
『何これっ?!…ズボン…?!』
と言うので、
『もんぺ。』
と私は返した。
お母さんがめちゃくちゃ喜んで、
『嬉しい~。』
と感動していた。
『畑始めたから、もんぺが良いと思って…。私とお揃い…。サイズは違うけど…。』
と私は言った。
これで一旦母の日は終了させた。
本番は明日だ!!
一応荷物が届くとはお母さんに知らせてはいたけど、それは私の荷物と告げておいた。
私の帰る前に私の荷物を大き目の段ボール一箱で送っておいた。
それが届いて、
『あなたの荷物重たすぎ~。運べないから玄関に置いてもらったからね。何が入ってるのよ~。』
とお母さんから苦情の電話が届いた。
その苦情も分からんではなかった。
重さにして二十三キロあったからだ…。
(しかし帰る時の荷物は十キロほどになった。)
でもその中身のほとんどはお母さんへの物だったので、後でお母さんは無駄に笑顔だった。
そして帰ったその日もスーツケースで帰った。
そのスーツケースもかなり重かった。
空港にはもちろんお母さんが迎えに来たので、お母さんに会うなりスーツケースを渡した。
お母さんは目を細めて、手を出そうとして引っ込めた。
でも私は譲らないので、お母さんは仕方なくスーツケースを持った。
そして引きずろうとして、
『また重たいねぇ~。どうしてあなたはこんなにも荷物があるのかねぇ~。』
と力を込めて引きずり始めた。
その間私は無言で目が細かった…と思う。
車のトランクに載せる時も、
『お母さんよりあなたの方が力があるんだからねっ!!』
と愚痴を言いながら載せていた。
そして家に着いて、
『荷物が重たいって言ったよねぇ~。これが入ってたから重たくもなると思わない?!』
と私はスーツケースから凍らせた油揚げ四十枚と凍らせたおからと空港で買って来て欲しいと頼まれた汁気たっぷりのお土産二袋…などなどを出しながらそう言った。
お母さんの顔色が一気に変わって、
『揚げを買ってきてくれたの~。嬉しい~。重たくても良いです…。あっ、これも空港で買って来てくれたの~。…重たくても良いです…。』
と申し訳なさそうに言った。

そして序章は過ぎて、次の日、何時に荷物が着くかは分からないので、家を空けることも出来ずひたすら待った。
やっとこさ配達の兄ちゃんが来た。
中身が何なのかは商品名に書いてあるのに、扉にぶつけるは斜めにするはで私が一人焦った。
お母さんは何のこっちゃか分からないので普通にサインをした。
そして送られて来た荷物が、段ボールではなく発泡スチロールだったのでお母さんが首を傾げ発泡スチロールを見ていた。
ここで私は少し種明かしをした。
『母の日のもんぺは引っ掛けで、これが本当のプレゼント!!開けて良いよ~。』
と言うと、お母さんは発泡スチロールだからとニヤッとして、
『分かった~。この前あなたたちが新潟に行ったから魚でしょ~。これは悪いけど分かったよ!!』
と言った。
お母さんが発泡スチロールの回りをグルグル巻きにしているガムテープを剥がし出した時に、私は届け先の紙に目が行って、品名に“メダカ”と書かれていたからすぐに剥がした。
お母さんにはバレてなかったようでホッとした。
お母さんは死んだ魚が入っていると思っているから、動きが雑で私が焦り始めた。
何も言わないのでもちろんお母さんも雑のまま…。
それとどんな形で入っているか分からないので、余計にもっと丁寧にして頂けないかと心に焦りが出て来たので、
『ゆっくりしてっ!!丁寧にっ!!』
とついつい言ってしまったら、お母さんが固まって、
『えっ?!…魚じゃないの…?!じゃあ何っ?!』
と戸惑いオロオロし出した。
『そのまま開けて良いけど、ゆっくりして。…蓋はそーっと開けてよっ!!』
と私が言うと、お母さんは発泡スチロールから手を離し、
『えっ?!何、何っ?!怖いよ~。触って大丈夫なの?!』
とうろたえ出した。
『触っても大丈夫。でも丁寧にゆっくりしてよ。』
と私が言うと、疑う目でお母さんはそっと蓋を開けた。
いきなりメダカがいるかと思いきや新聞紙だった…。
お母さんは首をひねり私に懇願する目を向けながら新聞紙を開いた。
メダカが出て来るかと思いきやまた新聞紙…。
いつメダカがいるのやら。
この新聞紙が最後かもと思った私は、
『この新聞はそーっとだからね。破れたら大変だから。』
と言ったら、お母さんがまた手を引っ込めて、
『破れたら~?!一体何なのっ?!本当に大丈夫なの?!』
と怯え始めた。
私は肯き大丈夫と合図した。
そしてそーっと新聞紙を開けると空気でパンパンに膨れた袋が三つ丁寧に発泡スチロールにはまっていた。
お母さんは一瞬何か分からなくて眉間にシワを寄せた。
私が、
『何だと思う?!よーく見て。』
と言うとお母さんが覗き込んだ。
そして、
『あーーーっ、…メダカ…。…ウソ~っ!!』
と声を上げ玄関に正座をしたまま泣き出した。
その顔でずっと私を見つめて泣きながらたくさん瞬きをしていた。
いつもこうなる。
私としたらちゃんとメダカを見て欲しいのだ!!
お母さんが今までに見たことがないメダカがいるからだ!!
『お母さん、それよりもちゃんと見て!!どんなメダカか当てて。』
と言うとお母さんは涙声で、
『えーっ!!何?!普通のメダカじゃないの?!』
と言って袋の中を覗き込んだ。
でもちゃんと見えないのでそっと袋を持ち上げて、中のメダカを覗き込んだ。
『えーーーっ!!もしかして…出目のメダカ?!』
と驚いた表情を私に向けた。
私は肯き、
『そうそう。見たことないでしょっ?!他のも見て!!』
と言うと、お母さんは違う袋に持ち替え覗き込む。
『…目が黒いけど…これは何?!』
と言うので、
『それはパンダメダカ。パンダさんなの。』
と教えた。
聞いたことがなかったようで、めちゃくちゃ目を見開いて、
『パンダメダカ~?!』
と言ってマジマジ見ていた。
そして最後はお母さんも見たことはあるのは知ってたけど、お母さんは持ってないので念の為に買った青メダカ。
それはすぐに分かって、
『これは青メダカね。』
と言った。
お母さんは青が好きなのもあってそれにした。
早速、容器に入れ替えた。
もちろん別々の容器に…。
しばらくお母さんはメダカを観察していた。
これでお母さんのところのメダカの容器は八個になった。
めでたしめでたし…ではなく、お母さんもだんだんと歳なので、めでたくないようで…、水換えと餌やりが大変と嘆いていた。