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でんでろ3
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novelistID. 23343
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ダイソーの腕章

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俺は、ある工場の裏手に立っていた。真珠の加工場だ。表向きは天然の阿古屋貝から採った真珠を使っていると言っているが、さにあらず。WA〇Aで禁止されている、人魚を泣かせてその涙を真珠にする、という方法をとっている。
 今日、俺は、この工場に、単独で潜入し、証拠の画像を撮影し、首根っこを押さえる気だ。
 そんな事ができるのかって? 大丈夫だ。俺は、巨費を投じて秘密兵器を手に入れた。
 商品番号G-073、透明ポケット付腕章、黄、108円(税込)。ダイソーで手に入れた。まったく、手痛い出費だったぜ。
 こいつは、ただの黄色い腕章じゃあ、ない。透明なポケットが付いていて、そこに好きな紙が挟める。
 だから、「団長」と書いた紙を入れれば「団長」の腕章になるし、「STAFF」と書いた紙を入れれば、「STAFF」の腕章になる。

 俺は、腕章に「見学者」の紙を入れ、建物に潜入した。キョロキョロと見回すが、見学者なのだから当然だ。不自然ではない。む、奥へと続くドアを発見したぞ。
「ちょっと、待て!」
と、鋭い声で呼び止められた。
俺は、あくまで自然な感じで腕章をアピールしつつ、振り返った。
「あっ、失礼。見学の方ですか。……しかし、見学の方は、そちらはご遠慮願います」
 そう言われては、仕方がない。ここは一時引こう。
 私は、物陰に入ると、腕章の中身を、「STAFF」の紙に入れ替えた。
 再び、先ほどのドアに向かう。もちろん、腕章をアピールしながら。
 誰も、とがめる者はいなかった。ふっ、当然だ。

 ドアを抜けると、そこは、目を覆わんばかりの光景が広がっていた。
 くそっ、奴ら、本当に、人か?
 奴らは、人魚を泣かせるために、ひたすら、人魚に玉ねぎをみじん切りさせていた。
 そうか、奴らが、真珠の他にレトルトカレーも売っていたのは、そういうからくりだったのか。
 俺は、腕章の中身を「撮影許可」の紙に入れ替えると、カメラを取り出し撮影を始めた。

 よし、これくらいでいいだろう。
 そう思ったその時、
「おいっ、そこで、何をしている!」
鋭い声をかけられた。
大丈夫だ。慌てることはない。
「撮影許可なら、取っています」
と、腕章を見せる。
「何だと? あぁっ! よく見りゃ、お前さっきの見学者じゃないか!」
まずい! さっきの奴だ!
「ちょっと、こっちに来い!」
ええぃ! ままよ!
俺は、腕章の「撮影許可」の紙を引き抜いた。
「さ、『殺人許可』?」
奴がビビッて後ずさる。
そう、こんなこともあろうかと、「撮影許可」の紙の下に「殺人許可」の紙を仕込んでおいたのだ。
「ということは、お前は俺を殺しても罪にならないのか?」
「さぁ、どうかな?」
 ここで、走り出すのは、素人のすること。俺は、「殺人許可」の腕章をチラつかせながら、悠々と工場を後にした。
作品名:ダイソーの腕章 作家名:でんでろ3