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水晶の籠

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とある時代のとある砂漠の真ん中に
水晶の柱と大理石の床と絹のカーテンがひかれた美しいお城がありました。
そこにイラという麗しい少女と、顔の無い従者が住んでいました。

「従者、今日は庭でお花をつむわ」

城の真ん中にスプリンクラーが回る美しい庭があります。
世界の七不思議に数えられる空中庭園のような庭です。
イラは可愛らしい少女、13歳です。
何の疑問も無くイラは水晶の籠に守られて生きています。

時々、旅人が城を訪れます。
そういう時、従者が、丁重にもてなし、ご馳走をふるまい、
たのしい夜の宴を、イラと旅人は過ごします。

そして、従者は旅人を全員殺して、ミンチにして
次の日、イラの食卓に出します。
何の疑問ももたず、少女は食して、ただ、ただ、素直に生きていました。
自分の他に誰もいなくても、何も恐いものもなかったので、
少女は毎日、花をつんだりして生きていました。
少女は一人で満足でした。
・・・まだイラは自我がなく、天使の域だったのです。

―続く―
作品名:水晶の籠 作家名:中林高嶺