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おやまのポンポコリン
おやまのポンポコリン
novelistID. 129
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罪とボランティア

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 ジャン・バルジャンはパンひとつを盗んだ為に投獄された。

 俺の場合は盗んだわけでもない。
ただ、通販で『プリンター付デジカメ』を購入して、その料金が払えなかった。

それだけで2年・・・。

俺は廃止されたダムを元の清流に戻す工事に、無理やり動員させられた。

『強制ボランティア制度』という新法のせいだ。

国民の間で沸き起こったサギ事犯に対する罰則強化の大合唱。
その結果、投獄にまでは至らない者への措置だ。

だが、結論からいえば刑務所に収監された方がましだった。
強制ボランティア制度による労働が、生易しくはなかった為だ。
それは、天下りの刑務官が鞭を振るって俺達を働かせるタコ部屋だったのだ。

今思い起こしても、それは地獄の日々だった。

何トンもの瓦礫を数人で引っ張り、身も凍る渓流に浸かって巨岩を配置する。
テレビでは盛んに評論家がこの事業を称えていたが、そこで働く者の待遇には触れていない。

朝、陽が昇ると共に起床し、夜の帳(とばり)が降りるまでの重労働。
バビロンの捕囚ですらこんな過酷な待遇を受けなかっただろう。

それでいて、給料は小遣い程度!
それすら元の生活に戻った時に困らないようにとの『思いやり制度(!)』によって取り上げられ、ボランティア期間中のアパート維持に使われた。

当然、逃げだすものも続出した。
その結果が、なんと19世紀の足鎖の復活!
さらに観光客に紛れ込まないようにと上半身も裸だった。



だが・・・、その地獄から今日ようやく解放されたのだった!

俺は生きて帰れたことを天に感謝した。

まだ、元の住居は残されているのか・・・。
不安はあったが、それは杞憂だった。
確かにアパートは確保されており、ありがたいことに電気も復旧していた。

「こんな事だけはしっかりしてやがる・・・」
俺は失笑を浮かべながら久しぶりの風呂につかった。
鞭で打たれて、まだ傷の残る背中は少し痛かったが、気にもならなかった。

思えば風呂上がりのビールも2年ぶり・・・。
俺はテレビの前でようやく羽を伸ばすことができた。

『42型フルハイビジョン、ブルーレイ付き』・・・。
通販で買った当時は高かったが、今ならだいぶ値も落ちたろう。

「考えてみれば、まだ一度も見ていなかったっけ」
俺は今晩は映画を観て過ごすことに決めた。