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てっしゅう
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「夕美」 第八話

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雅子には息子が一人居たが離れて暮らしていた。その費用も一緒に暮らしていた時よりは出費となっている。大学を卒業すれば経済的な不安は解消されるだろうが、一緒に暮らせるわけではないし、たとえお金の苦労が無くなっても俊之を失っている今では、自分のなかの満たされない気持ちが日増しに募るだけとなっていた。

雅子は実家の父親に相談して仕事を始める決心をした。家の中でじっとしていると気持ちがどんどん不安定になってゆくように感じられたからだ。
夫の仕事が変わって家を空けることがこれから起きるので、自分も外に出て仕事をすれば安心できると話したのだ。
預かっている夕美の弟晴樹にも夕方まで留守するから我慢するように伝えていた。もちろん晴樹は二つ返事でうなずいていた。

父親はコネで仕事先を紹介すると言った。有名商社勤務の重役として取引先に声をかければ簡単に済むことだった。
雅子は特に資格とか能力があるわけではなかったが、生まれつきの容姿端麗さが採用の決め手となって中堅建設企業の受付に採用された。
年齢は若くないが、言葉遣いとか礼儀などは親元で教えられていたから、接客の仕事には向いていたのだろう、就職した先方からも義理で雇ったのではなく好感をもって採用したと父親には伝えられていた。
作品名:「夕美」 第八話 作家名:てっしゅう