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33粒のやまぶどう  (短編物語集)

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 あ〜あ、最近このやり切れないため息から一日が始まる。そして今朝も同じ、あとは仕方ないかと続く。
 こんな沈鬱な思いで過ごす昼前に、チャイムが鳴る。光司がおもむろに玄関を開けると、焦燥し切った優子が立っていた。そして言う。
「ここの岩陰で、しばらく……、今度は……、愛の神さまを待たせてください」

 えっ、愛の神さまって? と光司は考えを巡らせる。
 そして、とどのつまりが、今までのすべての出来事が、優子との縁に繋がるためのものだったのかと年甲斐もなくはにかんでしまう。

 しかし、ここから優子との新しい人生の物語が始まるかと思い直し、一拍の間を取って、そっと手を差し伸べるのだった。