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33粒のやまぶどう  (短編物語集)

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 パシッ!
 緩やかに流れ始めたグラズノフのピアノ曲。それを打ち破るかのように手の平から冷たい響き。

 しかし、沙里(さり)はそれを強調し過ぎることもなく、手を高く上げ、淀みなく舞う。
 そうであっても沙里、きっと満足できないのだろう、汗を噴き出させ何度も何度も繰り返す。
 3日後に控えた発表会、晴れの舞台で美々しく踊るため、このクラシックバレエ教室で練習を積み上げてきた。

 そして──僕は知っていた。
 ライモンダの第三幕ヴァリエーションという演目が、まだあどけなさが残る12歳の少女にとって、いかに難しいか。それは踊りのテクニックだけではない。立ち姿の美しさや動きのしなやかさ、さらに内面から醸し出されてくる表情、すべてのものが妙妙たるものでなければならない。

 確かに年端もいかない乙女子には荷が重い。されどもこれはプリマへの登竜門、沙里はきっと頑張ってくれるだろう。僕はそう信じ、沙里の舞いを目で追い、エールを送る。