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33粒のやまぶどう  (短編物語集)

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「3、3、3、なぜ『3』は俺の前から消滅したのだ!」
 単身赴任の殺風景な一室で、缶ビール片手に、太一郎は犬の遠吠えのごとく叫んだ。
 そう言えば、最近のゴルフのこと、ショートホールでパーの『3』が取れない。しかもミドルのバーディーの『3』も、とんと縁がない。
「いやいや、これは腕が悪いから……、だよな」
 こう思い直したりもしてる時に、部下の榊原(さかきばら)が話していたことをふと思い出す。

 先週のことだった。生意気な部下であっても、たまには食事くらいは奢ってやろうかと、連れだって焼き肉店へと入った。
 そしてタン塩にレモン汁をたっぷりかけながら榊原が訊いてきた。
「太一郎さん、知ってますか? 最近の科学の発展でわかってきたことですが、宇宙を司(つかさど)る神から与えられた人間の宿命ってやつ。それ、何だと思います?」

 太一郎はこんなことを唐突に尋ねられても訳がわからない。そこで網の上の肉をひっくり返す間を取って「その大袈裟な宿命って、何だよ?」と部下の顔を見た。すると榊原はニッと笑い、タン3枚をいっぺんに摘まみ上げ、素早く口に持って行く。おいおいおいと文句をつけると、あとはシレッと……、
「数字って、0、1、2、3と始まり、その後は百、千、万、億と途切れることなく無限に続いて行くと思ってるでしょ。だけど、それぞれの人には、1年周期で変わって行く、欠落した数字ってのがあるのですよ」

太一郎は特に興味があったわけではないが、「ホッホー、いわゆる欠番だね。それは大変だ」と大袈裟に反応してやると、榊原は今度はロースを口一杯に放り込み、ニタつきながら……、
「例えばですよ、その欠番が768,924のような大きな数字だったら、日常生活に実害は出ないでしょ。だけど、時々神さまは気まぐれに、小さな数字を割り振ってくることがあるのですよね」と。
 太一郎はこんなくだらない話しに、「そんなのどこかの三流週刊誌の記事だろ」と結論付けた。

 しかし、榊原は怯(ひる)まなかった。
「実は私、ちょっと好きな娘(こ)がいたのですが、その娘いわく、ある日突然、数字の『5』が私の前から消えてしまったと。そのせいで、5円玉までもがなくなってしまったとか。その上にですよ、その娘がある時言ったんですよ、私との『ご縁』までデリートされたわって。とどのつまり、その娘とはそれっ切りとなってしまって……、ホント、欠落数字って、恐いんですよね」

 太一郎はこんなオヤジギャグ含みのバカ話しに開いた口が塞がらない。その結果なのか、安物の赤ワインを口からポタポタと、じゅんじゅんと焼き上がりつつあるカルビの上に零してしまったのだ。