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33粒のやまぶどう  (短編物語集)

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 このカップルは――神さまの悪戯?

 そうなのです、ほとんどの結婚が意外や意外の男と女の組み合わせ。誰も予想だにしなかった、いや、10年前には自分さえも夢にも思わなかった人と、同じ屋根の下で暮らすことになるのです。
 その動機は……、もちろん好きだったからです。

 されども思い切って言わせてもらえば、イキオイとハズミで一緒になっちゃいました、ってことでしょうか。
 私の場合も思い掛けない展開で、毒気一杯の妻を娶ってしまいました。

 おっと紹介が遅れました、私は津村(つむら)と申します。
 振り返れば独身時代、小さなブライダル会社に勤めてました。仕事は華燭の典(かしょくのてん)のコーディネート。カップルにとっての新たな門出、それを思い出深いものにすることです。
 だが当時ジミ婚が増え、売上減。この状態が続けば当然倒産です。まさに危機でした。

 そんなある日、訓話はいつも「とにかく」で始まり、そして「とにかく」で終わる通称〈とにかく社長〉がスタッフ全員を集め、厳しい表情で言い渡しました。
「とにかく売上を伸ばすために、独身スタッフは社内でカップルを作ること。そして我が社の、出来るだけ高級なブライダルプランを契約すること、とにかくですよ」と。

 えっ、これって、パワハラ含みの――、社内結婚の業務命令?

 社長権限の乱用じゃんと私たちはぶったまげ、思わず後退りしました。そして横を見れば、「ごもっともです、は、はい、ごもっともです」と社長の腰巾着、〈ごもっとも専務〉が首を縦に上げ下げしてるじゃないですか。なんだよ、お前は米つきバッタかよ、と頭にきました。