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33粒のやまぶどう  (短編物語集)

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 その時だった、二人の背後からしゃん、しゃん、しゃんと軽快な音が聞こえてきた。それはエクレウス号が駆け来る音だ。そして猛ダッシュに。亜伊はこれほどまでのスピードを見たことがない。
「どうしたの!」
 エクレウス号は亜伊の叫びを無視し、まるで天空を飛翔するかのごとく、川の中を疾走した。そして向こう岸へと。

 共に生きて来た愛馬はこちらを振り返り、高く前足を上げ、ヒヒーンと一鳴きした。それから今生の縁をすべて断ち切るかのように、闇の向こうへと消えて行った。
「ありがとう、お前は小馬座、エクレウスへと帰るのだね」
 潤と亜伊は、二人の純愛の一粒種を抱き締めて、三途の川の彼岸へと手を合わせるのだった。