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きんぎょ日和
きんぎょ日和
novelistID. 53646
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上に行ってもテンションって変わらないようだ…。

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与太郎(よたろう)さん(仮名;お母さんの知り合い)が現れたこともあって、お母さんがいろいろと今まで死んだ知り合いの人を思い出してはそのことを電話で話し始めるようになった。

その中でたまに、死んだばあちゃんの話も少し出てくるけど、二、三十代くらいの女の人がぼやけて見えるばかりで、よく分からないまま違う話へと変わったりして答えは出ない。

またお母さんは違う人の話を始めた。
『この宗教で知り合った人なんだけど、乳がんで死んじゃったの。抗がん剤の副作用で髪の毛全部抜けちゃってカツラ被ってたの。それでね、お母さんに、“ほら見て、カツラ。”って言ってパコッてカツラ外してハゲてる頭をいきなり見せられてねぇ~、ビックリしちゃったことがあったわ~。』
という話をされた。
なんという人だと私は言葉が出なかった。
『いつでも楽しい人だった…。その人はね早く神について証すものになりたがってたんだけど、その前に死んじゃったの。なりたかっただろうなぁ~。でも、旦那さんは超仏教だから反対してたみたいよ。でも娘さんが勉強しててもうすぐ証すものになるんじゃないかなぁ~。』
とお母さんは淡々と話す。
『へ~、娘がもうすぐ証すものに…。母親の敵討ち…じゃないけど、母親の分もって感じだね。』
『そうそう。母親の思いをものすごく背負ってると思う。』
『娘は何才?』
と私は聞いた。
『まだ、二十代前半だったと思う。』
『あらまあ~、若いわ~。』
『うん、若い。証すものになりたかったけど、なれなかった人ってどうなるんだろうね~。…娘さんはたぶん証すものになったら結婚はせずに生きると思う。』
とお母さんは言う。
だからって私は知らないので何も返事が出来ない。
そんなことを話していたら女の人が薄っすら見えてきた。
『お母さん、乳がんのおばちゃんって綺麗な人?!』
と私は聞いた。
『そうっ!!めちゃくちゃ可愛かったの~!!』
とお母さんはテンション高めにそう答えた。
『髪の毛長くて色白で目がデカい?!』
とまた私は聞いた。
お母さんの止まる気配を感じた。
『…あなた、まさか…ウソッ?!』
とお母さんから言葉が届いた。
『分からないよ…分からないけど…、“ことちゃ~ん(仮名;お母さん)!!”って手を振ってるけど…。』
と私がおばちゃんの声のマネをして伝えると、
『うそ~!!』
とお母さんは言うと泣き崩れた。
あらま…。
まだ乳がんのおばちゃんか分からないのに~。
泣いてるお母さんに、
『乳がんのおばちゃんて、こんな感じの声?!また聞こえるから、“ことちゃ~ん、死んじゃった~!!”…はっ?!こんな人?!』
と私は聞いた。
泣きながらお母さんの肯く音が聞こえて、
『そうそう、そんな人。』
と答えた。
『超テンション高くない?!死んじゃった~。だよ。そんなこと言っていいのかなぁ~。あっ、また、“全然大丈夫~。気にしな~い!!”だって。こんな人?!』
と私は疑いの思いでまた聞いた。
『そうそう、そんな人。本当にいつもテンション高かった。…あ~、上に行ったんだ~。良かった~。』
『お母さん、おばちゃんが、“ことちゃ~ん、泣かないで~。そういうつもりで出て来たんじゃないよ~。”だって。“神に助けてもらった~。本当に神様いたよ~。”だって。』
と私は伝えた。
『えっ?!証すものじゃないのに神様に会ったの?!あんなに証すものになりたいって言ってたけど今はどうなんだろう…。』
と泣きながらお母さんの疑問が届いた。
『おばちゃんが、“ならなくて良かった~。神について証すとかないよ~!!本人前にしたら、そんなこと言えないから~。だって神様の証明をするんだよ~。そんなこと無理無理~。”だって。ずっとこのおばちゃんはこのテンションなの?!お母さん…。』
と私は伝えながら引いていた。
ついにお母さんが笑い出して、
『そうそう、ずっとそのテンション。本人前にしたらって言ったよね~。じゃあ、会ったんだ!!』
と驚いている。
『おばちゃんが、“会ったよ~。…怒られたけど…。”だって。』
『怒られた~?!どうしてだろう…。』
『おばちゃんが、“娘のこと~。自分が信じているものを人に押し付けてはいけませんって怒られたの~。今も娘は信じて勉強してる~。旦那が正解だった~。旦那に早く会って謝りた~い。”だって。面白いおばちゃん。』
『あらまぁ~。そういうことか~。…娘さん一生懸命勉強してる…。』
とお母さんは言った。
『お母さん、娘にこの事話して止めさせたら?!』
と私は自分の率直な言い分を述べた。
そしてお母さんから即、
『ダメ~!!そんなこと出来ない~!!出来るわけないでしょ!!したいけどそんなことしたら大変な事になるよ。』
と言われた。
それを聞いて、
『おばちゃんが、“あっ、そんなことしなくていいよ~。私が蒔いたことだからそんなことしなくていいよ。だから娘の事を見ていなさいって怒られたの…。だからって娘に会えるかは分からないけどね…。”だって。自分の蒔いた事って死んだら終わりで逃げられるっていうことじゃないんだね。死んでもそれは続くんだね。』
と私は言った。
『あ~、だからモーセもまだ立たされてるんだね…。死んで終わりじゃないか…。いろいろしでかして来た人は、その後想像も出来ないくらいの何かが待ってるのかもしれないね。…お母さんちゃんとしよ~。』
とお母さんは自分に言い聞かせるようにそう言った。
するとあいつが出て来た。
『お母さん、お母さん、モーセが、“モーセは立っております!!神に怒られて立っております!!”だって。自業自得だよ!!あっ、“お母さん、モーセはあいちゃん(仮名;私)が怖いです。でもお母さんは好きです。”だって。モーセって暇なのかも…。』
と私は告げた。
お母さんの気持ちがコロッと変わったようで、
『モーセちゃ~ん、お母さんも好きですよ~。あいちゃん怖いねぇ~。』
とどっかに向かって言うので、モーセのお母さんへの肯きが見えた。
そしたら、
『お母さん、乳がんのおばちゃんが、“モーセと話してるの~?!”だって。』
と伝えたら、
『上に行ってるのに知らないんだ~。』
とお母さんは言う。
なので私は心の声でおばちゃんに、モーセとたまに無駄に話してることを伝えた。
『お母さん、おばちゃんにモーセと話してること伝えたら、“いいな~。羨ましい~。”って言われた。』
『えーーーっ、羨ましいとか思うの~?!…あっ、キリストに会ったのかなぁ~。ちょっと聞いてみて。』
とお母さんが言うので、おばちゃんの返事を待った。
待つこともなくすぐに答えが届いた。
『おばちゃんがキリストと話してることの方が驚いてる。“キリストと話してるの~!!すご~いっ!!”だって。』
お母さんにそう伝えた後、私とお母さんはどういうことだろうかと首を傾げていた。
そこについてはおばちゃんは何も言わなかった。
お母さんが、
『言えないこともあるのかもしれないね。』
と言うと、
『おばちゃんが、“ごめんね~。そういうことなの~。”だって。』
と伝えた。
そしておばちゃんが、
『お母さん、おばちゃんが、“ことちゃ~ん、また会えるよ~。それまで楽しみに~。”だって。』