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きんぎょ日和
きんぎょ日和
novelistID. 53646
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何処にあるか…ニガウリときゅうり。

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お母さんの家には畑があって、毎年毎年じいちゃんがいろんな野菜を育てる中、必ずニガウリときゅうりがある。
お母さんはそれを毎年楽しみにしていた。
夏にお母さんの家に帰ると、三食の内一回はニガウリときゅうりが出てくる。
まあ、飽きることもなく美味しいからいいのだが…。

上(神様)やらと繋がった年の夏、私と電話で話しながらお母さんは畑にニガウリときゅうりを採りに行った。
じいちゃんは考えもなしにニガウリときゅうりを近い距離に植えるから、生い茂った後はジャングルと化してしまう。
そのジャングルの中お母さんは野菜を探す。
でもお母さんは虫がいたら怖いので、なかなか奥まで覗き込めないらしい。
私としたらおばさんが何を言ってるか~と思う。

悪戦苦闘しながらお母さんのイライラ声が聞こえた。
『あー、もう、何もかもグチャグチャになってるから中まで見えやしない!!どうしていつもこんな風に植えるかなぁ~。』
と言いながら、野菜を探している。
私は何も助けられないので、
『ガンバレ、ガンバレ、お母さん!!ガンバレ、ガンバレ、お母さん!!』
とか、
『頑張った分、その後に美味しい~が待ってるから、文句言わずに探して、探して!!』
と応援したりしていた。
お母さんはイライラの中、
『ちゃんとしてるよ!!ちゃんと探してます!!』
と言ってくる。
こんな感じが数日に一回は起こっていた。

ある日、いつものようにお母さんが畑に行った。
ジャングルの中を見回したくないお母さんは、
『ん~、これでよしっ!!もうこれ以上見れない!!』
と言って引き上げようとした。
私はそんな中首を傾げ、
『お母さん、もうニガウリないの~?!』
と聞いた。
『うん、もうない!!お終い!!』
という返事が届いた。
それでも私は自然に首を傾げている。
『…ちょっと待って、…お母さん、まだニガウリあるみたい。』
と私が言うとお母さんは大きな声で、
『えーーーっ!!どういうこと~?!』
と叫んだ。
私の耳は痛かった。
最初、私も意味が分からず困っていた。
『よく分からない。…でもまだどっかに野菜あるんじゃない?!』
と私は言った。
『そんなこと言われても、このジャングルがどのくらい広いかあなた分からないでしょ?!幅は二メートルはあるの!!それで、普通はカーテンみたいになるんだろうけど、それがならずに裏側にグチャグチャ~ってなってるから、余計に探せないの。それとツルを這わせる棒の幅が三十センチくらいで、お母さんその中にも入れないの。兎に角グチャグチャで絡み合ってるから解(ほど)くことも出来ないの。そんな状態なんだから、全部採ることは出来ないの。』
と説明してくれた。
私はなんとなく理解した。
でもやっぱり勝手に首を傾げる。
どういうことかと集中してみた。
すると食べ頃の良いニガウリさんが見えた。
お母さんにそれを伝えたら、また、
『えーーーっ!!何処?!何処?!』
と叫んだから、また私の耳は痛かった。
『何処なんて言われても困るよ~。ただニガウリが見えるだけ…、ちょっと待って…。お母さん、今見える状況を伝えるから理解して。ジャングルに向かって、真ん中より右の下に一つ食べ頃なのがある。…うんうん丁度良い大きさ。…探して。』
と私は説明した。
お母さんがまさかまさかと探し始めた。
『えーっと、…真ん中より右、真ん中より右…で、下の方下の方…と…。この辺かなぁ…。大体その辺を見てみるよ!!本当にあったら凄いねぇ~!!』
とお母さんはワクワクしながらそう言った。
そしてお母さんの独り言を聞きながら待っていた。
『………あーーーっ!!あったーーーっ!!あったよーーーっ!!本当に食べ頃!!まあ~、こんなことってあるのね!!丁度いい丁度いい。』
とお母さんはまた大きな声で叫んだので、また耳が痛かった。
『マジでっ?!ニガウリあったの?!スゲ~!!神様って結構やってくれるね!!神様、よくやった!!いい仕事した!!』
と私は感動のあまり上を褒めた。
そんな私に上は肯いた。
ありがとうと言いたいのかは分からなかった。
食べ頃のニガウリが見つかったからかお母さんが、
『まだ他にない?!ニガウリだけじゃなくて、きゅうりも…。』
と言ったけどそれ以上は見えなかった。

その日以来、お母さんが野菜を畑に採りに行くときは、お母さんはお母さんの見つけられる範囲の野菜を採る。
その後私が見える野菜を伝える。
役割分担のような形で野菜の収穫をしていた。
ただ、私は見つけるだけで一つも食べてはいないところが悔しい…。
お母さん曰く、
『お母さんが代わりに食べてあげる。』
と言って、ご飯の時に電話をかけてきて、
『あ~美味しい。ニガウリの炒めものあ~美味しい~。きゅうりもあ~美味しい~。』
とわざわざ伝えて来る。
一通り美味しさを伝えると、
『じゃあ、切るね。ゆっくり食べたいから。』
と言って切られる。
目的が分からない。
何にしても私は食べてない。

また別の日のこと。
私からお母さんに、
『畑に行かないの?』
と聞くと、
『昨日、あれだけ採ったんだから今日は何もない。』
と言う。
『そうなの。…でもくの字に曲がったきゅうりが見えるよ。』
と伝えても、
『え~っ、くの字~!!ないと思うよ~。』
と言う。
すると声が聞こえた。
『お母さん、きゅうりが、“ここにいるよ~。食べ頃~。”って言ってるよ。』
と私も諦め気味でそう言うと、お母さんは急にやる気を出して、
『きゅうりが喋るの?!行こっ!!ちょっと畑に行ってみよっ!!』
と重かったはずのおしりが軽くなったようだった。
そしてきゅうりの所に向かいながら、
『くの字、くの字。』
と歌なのか独り言なのかが聞こえた。
『さてさて、あるかなぁ~。』
とお母さんが言うと、
『お母さん、“ここ~!!ここにいるよ~。”って誰かが言ってる。』
と私は伝えた。
急にお母さんは困ったようで、
『ここって言われても…お母さん聞こえないし…見えないし…。』
と言ったので、私も“あっ!!”と気付いて、くの字のきゅうりが見える所を伝えた。
そしてそれはもちろんあったようで、
『あったーーーっ!!くの字になってる~!!』
とうるさい声が聞こえた。
くの字をお母さんが余計に触っていたのか、
『お母さん、くの字のきゅうりが、“お母さん、お母さん、くすぐったいくすぐったい。”って言ってる。』
と伝えると、
『あっ、ついつい触ってた。…こちょこちょこちょこちょ~。』
とお母さんがくの字にするもんだから、それが私にまで伝わってきて笑い出した。
お母さんがエスカレートするから、私は気分が悪くなり、
『もう止めて!!気持ち悪くなる!!』
と訴えた。
お母さんはサッと止めた。
きゅうりも黙った。

くの字のきゅうり以来、お母さんが畑に行ってから私に聞くのじゃなく、
『どう?!畑に野菜出来てる?!』
と家の中で聞くようになった。
そしてあると分かると長靴を履き畑に繰り出す。
時には、
『きゅうりがちょっと足りないなぁ~。後もう一本くらい欲しいかなぁ~。何処かにまだない?!』
と聞いてきたりすることもあれば、