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でんでろ3
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novelistID. 23343
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冬の終わりに

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安アパートの一室に、コタツが一つ。差し向かいに父と息子が入っている。二人とも、深々とコタツ布団をかぶり、腕までコタツに突っ込んで、背中を丸めている。
「父ちゃん、寒いよ」
「いや、それほどでもない」
「寒いよぉ」
「よく思い出せ、本当の真冬の寒さを。今は、冬の終わりだ。あのころに比べれば、寒くない」
「比べて、どう、とかじゃなくて、今、寒いんだよぅ」
「よく考えろ、ここは、関東だ。北海道に比べれば、暖かいぞ」
「僕、聞いたことあるんだけど、北海道の人は、家の中は、暖房ガンガンで、Tシャツ一枚で過ごしてるんだってよ」
「父ちゃんは、地球に優しいんだ」
「僕にも優しくしておくれよぅ」
「甘やかしてばかりではいかんのだ」
「あんまり甘やかされた記憶がないんだけど……」
「大人になれば分かる」
「また、それ?」
「そんなことより、今は、冬の終わりだ。それがどういうことだか分かるか?」
「もうすぐ冬が終わるっていうこと?」
「だから、お前は、あかさたなだって言うんだ」
「『浅はか』って言いたいの?」
「……そうとも言うな。つまりだな、冬が終わるという事は、春がやってくるんだよ」
「春が!」
「そう! 春だ!」
「じゃあ、もう、夜が明けたら、僕や父ちゃんが凍死してないか、心配しなくていいんだね?」
「そうだ!」
「寒すぎる夜に、ドンキホーテに行って、ブラブラしなくていいんだね?」
「そうだ!」
「寒さしのぎに、資源ごみから、古新聞を盗んでこなくていいんだね?」
「そうだ!」
「暖まるために、むやみやたらとお湯を沸かして飲まなくてもいいんだね?」
「そうだ!」
「父ちゃんと、年がら年中、くっついてなくていいんだね?」
「そうだ!」
「コンビニに行って、おでんの匂いをかいで、思わず涙ぐまなくていいんだね?」
「そうだ!」
「自動販売機の前を通る度に、つり銭の取り忘れがないか確かめなくてもいいんだね?」
「それは、許さん」
「ちっ!」
「まぁ、それはさておき、春になれば、多くの問題が解決するぞ」
「そうかぁ、早く春にならないかなぁ」
「春になったら何がしたい?」
「父ちゃんとキャッチボールがしたい」
「はっはっはっ、グラブはおろか、ボールすらないぞ」
「じゃあ、縄跳び」
「はっはっはっ、首をくくる縄すらないから、生きていられるんだぞ」
 その瞬間、室内の照明とコタツが同時に消えた。
「父ちゃん、電気代、ちゃんと払ってる?」
「はっはっはっ、ちょーっくら働いてくらぁ」
「いつも、そうしろ」
作品名:冬の終わりに 作家名:でんでろ3