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てっしゅう
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novelistID. 29231
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「夕美」 第一話

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「お義母さん、誠一郎さんの収入がよくなれば聡子さんへお金あげても良いけど、私たちだっていっぱいいっぱいの生活をさせられているんですよ」

聡子の兄は誠一郎と言った。実家の名前は大沢。誠一郎の妻の名前は雅子といい、実家は大手商社の役員をしている父親がいる。
雅子は養女で肩身が狭いが、実家の威勢だけは傘に着ている。したがって家計が苦しくても働こうとはしない。もちろん実家から支援などもらえるわけでもなかった。

大沢の両親は雅子に内緒で用事を作って出かけては聡子にお金を渡していた。わずかばかりの金額だったが聡子には喉から手が出るものだった。
成長してゆく子供達の服も必要だったし、学用品も買わないといけなかったし、家計は火の車になっていた。
働きすぎた聡子はやがて体調を崩し、長女の夕美が中学三年の夏に他界した。

早すぎる死に大沢の両親は嘆き悲しんだ。兄の誠一郎も妹のことが可哀そうで葬儀場で男泣きに泣いた。一人冷たい視線で見ていたのは雅子だ。
心の中で「厄介なことになった」そう思っていた。それは残された子供達の面倒を自分達が見ないといけなくなってしまうという懸念だった。

葬儀が済んで大沢家では残された聡子の子供達をどうするか親戚連中の間で協議されていた。
雅子は引き取れないの一点張り。叔父や伯母たちも家計の苦しさや面倒が嫌なのか敬遠した。児童相談所の仲介で夕美と晴樹は誠一郎が引き取り、
残りの三人はそれぞれ叔父や伯母の家に引き取られていくことになった。
作品名:「夕美」 第一話 作家名:てっしゅう