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ニタと仲間達

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 今日は晴れてて良い天気だ。ぽかぽか陽気で過ごしやすい一日。
 テレビを見ていたはずのニタは、あまりのぽかぽか陽気にうたた寝してしまっていた。ソファに大の字になって寝っ転がっているその姿は、まるで白くて大きなぬいぐるみの様だった。
 と、そこへ、洗濯籠を小脇に抱えてアリスがやってきた。洗濯籠には大量のぬいぐるみが詰めこまれてある。
「…まったく…。アルティメットは…」
 アリスは、ソファの上のニタの姿を見て「やれやれ」とため息をついた。
「…こんな所にもぬいぐるみを出しっぱなしにして…」
 前言修正。
 アリスがソファの上に見たものは、白くて大きなぬいぐるみの姿。
 確かにそれはニタであったが、アリスにはそうは見えなかったらしい。
 彼女はニタの首根っこを掴むと、ぬいぐるみだらけの洗濯籠に突っ込んだ。
 そして、そのまま洗濯場へ移動。
「…それにしても、このぬいぐるみ、重いわね」
 一向にニタだと気付かないアリスだったが、同じくしてニタはぐっすりと眠りの中。
 ニタはこれから起こる災難に気付くことなく、幸せそうに眠っていた…。



「ふふふん~♪」
 洗濯場から聞こえてくるアリスの鼻歌。洗濯日和のお天気にとてもご機嫌なご様子。アリスはクルガのお姉さんであるが、その冷静さや落着きから皆のお姉さん的存在でもある。
 順調に洗濯籠のぬいぐるみ達を、巨大洗濯機に放り込んでいく。
 リビングのソファでお昼寝をしていたニタは何故かぬいぐるみだと勘違いされて、アリスに回収され、他のぬいぐるみと同様にニタも洗濯機に放り込まれた。が、この期に及んでもまだ爆睡中。
 ちなみに、この巨大洗濯機はディレィッシュが制作した超高機能な洗濯機なのである。時間から仕上がり具合いまで、ボタンを押せば思いのまま。洗剤も使用しないので、環境に優しい洗濯機なのだ。
 アリスはぬいぐるみを全部入れると、洗濯機のふたを閉めた。
「えっと、ぬいぐるみ、ふかふか仕上げ、じっくり。………あれ?スタートボタンはどこかしら」
 ボタン操作に戸惑うアリス。
 しかし、その間にニタはようやく目を覚ました。
 そして、すぐに状況を理解する。
「うっわ、アリス、またかよ!」
 ニタ洗濯事件はこれが初めてではなかった。
 しょっちゅう、アリスはニタとぬいぐるみを間違えて洗濯している。
 ニタにとっては甚だしく迷惑なことであったが。
「ちょっと、アリス、出して!」
 巨大洗濯機から出ようと慌てふためくニタ。しかし、ぬいぐるみを踏み付けて滑って転ぶ。
 転んだ拍子に頭を打ち付けてしまった。
『ゴンッ』
 洗濯機の内部から聞こえた鈍い音。
 まさかニタが入ってるとは思うまい。
 アリスは不思議そうに首を傾げるだけだった。
「あ、あった」
 ニタには気付かず、スタートボタンに気付いたアリスはボタンをポチッと押した。

 万事休す。
 中ではニタが頭の痛さに耐えながら、懸命にふたを開けようとしていた。
 が、洗濯機の始動と共に回転に飲み込まれて、仲間(?)のぬいぐるみ達と共に『華麗なる遠心力の世界』とやらを骨の髄まで味わったとか。
 ニタが洗濯機の外に出れたのは、それから二時間経ってからのことだった。
 外に出るやいなやニタはアリスに怒りをぶつける。
 が、彼女はニタの怒りをいともたやすくいなして
 他のぬいぐるみ同様、ニタも物干し竿に天日干しにしてしまった。

「でも、ニタ綺麗になったわよ。良かったわねっ♪」
「…良くないし」
「あら、もしかしてニタ怒ってる?ふふふ、そしたらごめんなさいね」
「その謝罪に誠意を感じられないのはニタだけ…?」
「あらあらニタちゃん、カリカリするのは良くないわよ」
 むぅ、と唸り、アリスを睨むニタ。
「あら、そうだったわ」
 アリスは何かを思い出して、ポンと手を叩いた。
「どしたの?」
「ハクアがケーキ買ってきたらしいの。食べに行かなきゃ」
「ニタも食べたーい」
 物干し竿でもがくニタ。
 しかし、アリスはニッコリと微笑みながら
「ダメ。渇くまで部屋に上がっちゃダメよ。渇くまで、そこにいなさいな」
と言う。
「…こうなったのはあんたのせいなのに…!この●●●●!」
 イライラしてこの世のものとは思えない程の卑猥な言葉をニタはアリスに投げつけた。
 すると、アリスはやんわりと微笑み、ニタが動かないようしっかりと物干し竿にニタを括りつけた。
 そして、そのままニタを置いて家に戻ってしまった。
「…あの女…鬼だね…」
 取り残されたニタは一人でしくしくと泣いた。


作品名:ニタと仲間達 作家名:藍澤 昴