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きんぎょ日和
きんぎょ日和
novelistID. 53646
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またあの男の子が現れた。

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と声をかけたら、首を横にイヤイヤと振る姿がアップになって見えた。
『イヤじゃない!!あんたがいたらお母さんが迷惑するの!!また軍服持ってとかされたら歯磨きするのだって大変なの!!いいから神様に助けてって言えばいいの!!声に出せないなら心で思ってみて?!そしたら助けてくれるから。騙されたと思っていいからやってみなさい!!分かったっ?!まったくもう!!』
と私は自分の思いまで込めてそう言った。
どんどん縮んで行きそうなくらい両足を抱えて怯えている。
でも私はそれ以上に怖い思いをしてあの時歯磨きをしたんだから、その子も文句は言えないだろうと腹をくくって言った。
何か声が聞こえた気がしたけど、何も状況は変わらなかった。
お母さんに何も変わらないと呼びかけていたら、お母さんが電話に出た。
『どうなった?!』
とお母さんが聞いてきた。
どうやら私の声が聞こえてなかったようだ。
『分からない。何も変わらない気がする。上に助けてって言いたくないって。』
『えーっ!!言いたくないって!!』
『イヤイヤって首を振ってた。』
『そっか~、イヤかぁ~。…分かった。また何か見えたら教えて。』
と言われ電話を切った。

電話を切って五分もしないうちに何かが見えた。
何だろうと思った。
その男の子だった。
たった今電話してたのに、私はもう忘れてしまっていた。
そうだった、そうだった…。
でもさっきとは何かが違う…なんだろう…。
あっ、その子の上から光が差してる。
どういうことだろうかと見ていたら、膝を抱え込んでるその子のお腹の部分に後ろから誰かが抱くように浮き上がっていった!!
マジかっ?!と思いながらその姿に見とれていた。
…そうじゃないそうじゃない、お母さんに電話しなくちゃ。
『お母さん、男の子が上に上がって行ってる!!』
と言うと、
『ウソーーー?!本当にっ!!』
と驚きながらも喜びの声が聞こえた。
『うん、今見えてるんだけど、…お母さん、またたまげるよ。その子の服めちゃくちゃ汚かったのに、だんだんと綺麗な一枚布になって行ってるよ!!地から離れたら汚くないみたい…。』
『へーーーっ、そんな風になってるの~?!』
『お母さん、顔も変わって行ってる。気持ち悪い目だったのに、普通の顔になってる。…あっ、日本人じゃないっ!!』
『えーーーっ!!日本人じゃないの?!どんな顔してる?』
『ん~、…日本人じゃないけど…、アジア系も混ざってるような顔。ん~難しい…。でも年齢はやっぱり七~十才くらいだと思う。』
『そっか~。まだ上がってるの?!』
『うん、どんどんどんどん上がってる。白い雲のような光の中のような所をまだまだ上って行くよ。…お母さん、上って遠いんだね。』
と私はふとそんな気がした。
『遠いのかもね…。でも、神が救ってくれたんだと思うとなんだか嬉しいね。その子助かって良かったね。』
とお母さんは優しく言った。
すると何処からともなく声がした。
『お母さん、何か聞こえたよ。…“ありがとう”…って聞こえた。…その男の子かなぁ~。』
『へ~、お礼を言えるんだ~。その子だと思うよ。』
とお母さんは言った。
なんか最初の出会いのせいもあるのに、お母さんと私は納得して電話を切った。

ひよちゃんの家からの帰りもお母さんから電話がかかった。
その男の子は日本人には見えないからどういうことなんだろうかと二人で答えが出るわけでもないのに考えていた。
ここは日本なのに他の国の人がいるのか…とか、先祖代々に実は日本人離れをした人がいた…とか思い付くことを話していた。
でも答えを知っているわけではないので頭の中がグルグルするだけだった。
そんな中、上が出て来た。
『お母さん、上が、“天での戦争の時の話ですが、…お母さんのしている宗教では、天での戦争がいずれある…とか言いますが、まっ、それは置いといて、昔々にその戦争はあったんですね。その時について聖書には何と書かれていますか?《サタンは地に落とされた。その時サタンは天にいた人々の三割ほどを道連れにした。》とありますね。その三割の人々は助かって天に戻って来たと書かれていないのであれば、その男の子はその内の一人かもしれませんね。”って言ってるよ。“霊感がある宗教の方たちは落とされてしまった天の人々を救ってくれてもいいんですがね。”だって。』
と私はお母さんに伝えた。
二人で話していた考えと全く違うから、私もお母さんも言葉が出なかった。
『そういうことになってるのか~…。深いね~。…それにまだ続いてるってことに驚いた。宗教の人たちはもうすぐ起こると思って信じてるよ。お母さんも信じてたけど、上が出て来てからはお母さんも変わった。…それと宗教のおばちゃんたちはこんなこと出来ないわっ!!あなたにしか出来ないんじゃないの?!』
とお母さんが言い出した。
『マジでっ?!そんなことしたくないよ~。占い師とか霊媒師がやればいいんじゃないの。何か白い変なの振り回して、上がれ~、上がれ~…かなんか言ったらいいんじゃないの?!』
『ダメダメダメ!!そんな人たちが出来るとは思わないよ~。』
とお母さんは言う。
『お母さん、上が、“占い師とか霊媒師は…どうでしょうかね…。あいちゃん(仮名;私)、やってみたらどうですか?!自分の好きなように、思うがままに…。救われたいけど出来ない人もいるかもしれませんよ。もし聞こえたのなら、私がその人たちを助けますよ。”って言ってるよ。お母さん、どうする?!』
『ほらほらほら~。やっぱりあなたがそうなんだって!!出来なかったらそれでいいから、一回やってみたら?!』
と簡単に言いやがった。
私にそんな力があるわけでもなく、見えるわけでもなく…何処に向かって考えれば良いのか分からなかった。
この時はそんな感じで話が終わった。


それから何日くらいだろうか、上の言ったことを考えていた…。
どうしたらいいのか分からない…。
私は霊媒師とかじゃないので、何かを始める前のお祈りの歌やら言葉も知らない。
そんなことを考えていると上から、
『そんなもの必要ないですよ。心から思った時に、その時に出る言葉で十分ですよ。』
と言われた。
そんなこと言われてもやっぱり分からない…。
それでも尚も考えた。
そんな私に上が、
『助けて欲しいと思っている人がいるかもしれませんよ。』
とヒントなのかそう言ってきた。
私は首をひねりながら心の中で、
“助けて欲しい人…?!とは何か…。”
と考えた。
すると何処からか小さな小さな声が聞こえた。
『はい…。』
と…。
私は耳を疑った。
キョロキョロしたけど見えるはずもなく、そして意を決し私は口を開いた。
『助けて…欲しい人?』
と声を出して小さな声で尋ねてみた。
また同じ方向から小さな声が聞こえた。
『はい、助けて…。』
と…。
私はその方向に向かって、
『神様に助けてって言えばいいよ。』
と伝えた。
そう言うとその声の主が見えた。
あの男の子のように汚い姿だった!!
マジかっ?!と私は目を疑った。
でも事実だった…。
私の家の中にいるのか何処か遠くにいるのかは分からないけど、その子も縮こまるようにして膝を抱え込むように座っていた。