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自転車

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私は運動神経が鈍くって、小学4年にもなって自転車が乗れない子だった。
周りの友達がすいすいと二輪の自転車に乗っているのに、私は補助輪付きの自転車に乗っていた。
その頃の写真アルバムを見てみると、それでも得意げに自転車に乗っている私の姿がある。

当時ピアノを習っていて、先生のおうちまで補助輪付きの自転車で通っていた。
あるとき、ピアノの日にいつものように補助輪付きの自転車で先生のおうちに行っていた私。
途中、田んぼのある場所を通りかかっていたとき、対向車を避けようとして端に寄り過ぎた私は、補助輪の片方を道からはずしてしまい、その反動でそのまま田んぼに落ちてしまった。

一瞬何が起こったかわからなかった私。
しばらく呆然としていたと思う。
近所のおばさんが駆けつけてくれて、私を引き上げてくれた。


それから、補助輪はずしの練習が始まった。
夕方、晩御飯を食べた後、近所の公園へお父さんと一緒に出かける。
公園の横に少し傾斜のゆるい坂道があるのだ。
少しお父さんに徐行をつけてもらい、坂道の傾斜を利用して自転車をこぐ。
何度も転んだ。何度も膝をすりむいた。
それでも、少しずつ距離が進むのがうれしくて、毎日お父さんに自転車の練習を頼んだ。
ある日、同じように徐行をつけてもらっていて勢いがついたなと思い

「もう、離していいよー」

といったら、遠くのほうからお父さんの

「もうとっくに離しているよー」

の声。
え?と振り向いたら、向こうで手を振っているお父さん。

前方不注意で、またも転んでしまった。

でも、その日を境に私は自転車にすいすいと乗れるようになったのだ。


今、私は自分の子供に自転車の乗り方を教えている。
よろよろと頼りげなく自転車に乗る私の娘。
当時私が練習したような傾斜の緩やかな坂道はないけれど、家の前の道路は車の往来も少なく、
結構幅も広いし、道も真っ直ぐなので自転車の練習にはちょうど良い。
ヘルメットをつけさせ、膝パッドをつけさせ、荷台に手を置いて少し徐行をつけさせる。

「もう離して良いよー」

という娘。
まだまだすぐに転んでしまう彼女だが、いつかきっと私がやったように、そのまますいすいと走り去ってしまうことだろう。
作品名:自転車 作家名:moon