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物と者

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私が14才を迎える頃、それは突然やってきた。そのときからそれはやっぱりそれだったのだ。今もそうであるように。
私の母親はスナックのママで、父親は知らない。
子供たちがなぜ彼らの母親の事をママと呼ぶのか分からなかった。知らない男が母親を呼ぶときの名称だと思っていたので、ママという響きには子供と母親との関連性を感じさせるものはなかった。幼稚な可愛さや、親子の温もりなど感じるはずもなかったのだ。今となって考えると、いい年をしたオヤジが年増の女をママと呼ぶその稚拙さと、愛情の代用としての呼称としてみれば納得もいくのだが、結局ママという響きに心地よさを感じる事は一度もなかった。
父という存在は知っていた。しかし、母親は教えてくれなかった。
作品名:物と者 作家名:荒岸来歩