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月とコンビニ
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夏恋花火

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ツバキ 「そう。その世界最大級とも言われる規模の花火が打ち上げられるとなったら、そりゃ人は集まるよ。でもね…花火の打ち上げは失敗した。本来の高さに上がる前に、花火が爆発してしまった。死者は一人。一般客への厳重な対処があったらしいけど、それだけで済んだのは本当に奇跡ね。」
シン  「その死者って…」
ツバキ 「シンくんも話には聞いているんじゃない?その人は…」


シーン4
●場所:神社
SE:石の階段を上る音

シン語り:翌日、柊の誘いを再び断り、俺は神社に行った。すまん…柊。
シン 「やっぱりいた・・・」
女  「あ、こんにちは。」
シン 「こんいちは。昨日は突然帰ってすいませんでした。」
女  「いや、気にしないで。私もいきなり変なこと言っちゃったし…それより今日はどうしたの?また何か神社に用?」
シン 「用っていうか」
女  「ん?」
シン 「報告ですかね。」
女  「報告?」
シン 「はい。今回の花火大会、楽しみにしててください。きっと、四尺玉を打ち上げて見せますから!」
女  「えっ・・・」
シン 「報告はこれだけです。俺はちょっとこれから、やらなきゃいけないことがあるので。」
女  「えっ、ちょっと、打ち上げるってどういう、」
シン 「とにかく、当日を楽しみにしててください。それでは!」
女  「だから、ちょっと…」
●場所:帰り道
シン語り:あんな大口たたいたけど、俺は花火師じゃないし、花火を打ち上げることなんてできない。それでも1つだけ当てがある。

ツバキ(回想)「シンくんも話には聞いているんじゃない?その人は・・・あなたのおじいさんよ。」

シン語り:じいちゃんがあの花火大会に、そして四尺玉に関わっていたのなら、少なくとも知っているはずなんだ・・・・。
●SE:ドアの開閉
シン 「ただいま。」
●SE:靴を脱ぐ音
SE:廊下を歩く音
SE:襖をあける音
シン 「なぁ親父・・・花火、作ってくれよ。」
シン語り:そう。じいちゃんの後を継いで、花火師になった親父なら。


シーン5
●場所:家の居間
シン 「花火、作ってくれよ。」
親父 「花火?帰ってきてそうそう何言ってんだよ。俺は今疲れてんだ。昨日も寝ずに蔵で作業してたからな。それに、花火なら今俺が作ってるじゃねぇか。」
シン 「四尺玉…」
親父 「あ?」
シン 「四尺玉を作ってくれ!」
親父 「・・・・お前、自分が何言ってるのか分かってるのか?」
シン 「分かってるよ。20年前の花火大会の事も、そして、じいちゃんのことも。」
親父 「あのな、花火ってのは工作の時間とかとは訳が違う。命が係ってんだ。じいさんの時はたまたま被害が一人で済んだが、本来ならもっと死者が出てただろうよ。花火師ってのはな、人の命背負ってんだよ。だから俺は十年前の花火大会も、三尺玉を使ったんだ。別に四尺なんてデカイやつを作らなくても、俺たちには技術がある。四尺を超える花火の魅せ方ぐらい出来るんだよ。じいさんは少し無茶をしすぎたんだ…それに、費用もバカにならない。期間だって後一か月だぞ?県知事の許可とかも必要だし、そんな高校生の軽はずみな発言で、やすやすと作れるもんじゃ」
シン 「その花火を」
親父 「は?」
シン 「その花火を、見せたい奴がいるんだ。」
親父 「あのな、さっきも言った通り作るには」
シン 「俺が手伝う。」
親父 「・・・・・・」
シン 「時間が無いっていうなら俺が手伝う。金がやばいっていうなら今度バイトして、それで何とかして」
親父 「命は?」
シン 「……」
親父 「人様の命は一体誰が保障するんだ?さっきもいっただろ?失敗しましたじゃ済まされねぇんだ。」
シン 「それも分かってる。俺の身勝手な頼みっていうのも分かってる。」
親父 「だったら諦め」
シン 「でも、諦められない。だから頼むよ親父。」
親父 「頼むってもな…」
シン 「命は、親父の花火師としての腕が保障する」
親父 「全く…どんだけ身勝手なんだよ。一体誰に誰に似たんだかね。」
シン 「親父!」
親父 「・・・・・はぁ…。失敗するかもしれないぞ?」
シン 「親父なら絶対出来る。」
親父 「ふっ、花火のこと何も知らない奴が良く言うぜ。こりゃ、負けたなぁ」
シン 「親父?」
親父 「おい、シン。お前、大学に進学するんだよな?」
シン 「あぁ。」
親父 「花火師になるつもりはないんだな。」
シン 「ない。」
親父 「なるほど・・・・はぁ…しょうがねぇなぁ」
シン 「えっ?」
親父 「うしっ。じゃあ作るか、花火。」
シン 「本当か!?」
親父 「あぁ。もし、お前が花火の為に進学をやめる。なんて言ったら作るのを止めたが、お前の中にやりたいことがしっかり決まってんなら、今回は俺が付き合ってやるよ。とりあえず今は四尺玉、打ち上げてぇんだろ?」
シン 「あぁ!恩に着るよ親父!」
親父 「ただし、期間は一か月しかない。お前にも手伝ってもらうぞ。この大切な時期に勉強の時間を全部花火に費やす覚悟はあるか?」
シン 「覚悟なら、最初からできてるよ。」
親父 「やる気、満々じゃねぇか。じゃあ早速明日から取り掛かるぞ。」
シン 「親父もやる気じゃん。三尺で満足じゃなかったのか?」
親父 「満足なんて一言もいってねぇぞ?それに、俺はじいさんを超えてみたいからな」
シン 「親父の方が俺よりもやる気になってる・・・(笑)」
親父 「なんか言ったか?」
シン 「な~んも。」


シーン6
●場所:作業場
親父 「ふぅ~・・・とりあえず、あと半分ってとこか。他の花火も下のやつらが仕上げてくれたから、残すはこいつだけだ。」
シン 「あと二週間か・・・」
親父 「まぁギリギリってところだな。お前も最初は作業おぼつかなかったが、もう手馴れてきてるし、どうだ?このまま俺の後継いじまうか?」
シン 「それは遠慮しとくよ(笑)」
親父 「だろうな。それよりお前、どうして花火がこんなにも人々に好かれているか知ってるか?」
シン 「なんだよいきなり。」
親父 「もし花火が、火薬の爆発音や閃光だけなら、最初はびっくりしても、人の心に感動を残すことは無かった。花火が人を感動させるのは、音や光の強さだけでなく、“美しさ”を持っていたからだ。美の追求に花火師が没頭してきた結果、日本の花火は比類無き“美しさ”を手に入れたんだ。それがあって火薬が燃焼するだけの化学反応から芸術になったというわけさ。」
シン 「美しさねぇ」
親父 「まっ、それを出すのが難しいんだけどな。さて、さっさと仕上げちまうか」

シン語り:俺と親父は期限ギリギリまで作業を毎日続け、ついに…四尺玉が完成した。
親父 「ようやく完成だ。しかしやっぱり、三尺とはデカさが違うよな」
シン 「これが、明日打ち上げられるのか…」
親父 「あぁ」
シン 「打ちあがるといいな。」




シーン7
●SE:祭りの音。
SE:賑わい

シン語り:そして、花火大会当日
親父 「ようやくセッティングも終わったな」
シン 「あぁぁ…超疲れた…。後は、打ち上げるだけか」
親父 「おいシン。打ち上げは、俺と下の奴らでやるから、お前は必要ねぇぞ」
作品名:夏恋花火 作家名:月とコンビニ