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諸行無常

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「よくない。これはけじめだから」
 尚毅のそんな言葉を真理は聞きたくなかったが、耳をふさいで聞かないふりをするのは子どもがすることだと思われたから、精々すまして紅茶を飲んだ。
「感謝してるんだ、真理のお母さんには。だからちゃんと自立したい。縁もゆかりもない俺をこの家に住まわせてくれて、大学まで行かせてくれて、そのお陰で俺は今こうして食って行けてるわけだから」
「そういう言い方、ママ、一番嫌いだった」
「でも事実だ」
 しばらく辺りに沈黙が落ちる。死んだ真理の母親のことを二人共、思い返していた。
 尚毅の視線が真理のポニーテールの先を捉える。金色の髪は、温い色をしたカーテンに遮られて、もう陽の光を弾いてきらめかなかった。真理は尚毅が真理という人間を見ていないと感じた。
 尚毅の中では今、その髪の一房が真理自身ではないのだと。
「真理は大人っぽくなった。当たり前のことを言うようだけど、マリーに似ている。…これから、もっと似るのかな」
 そういう男の目を、瞳を、真理は見るべきなのだと、見て知るべきことがある筈なのだと分かっていて、そうすることは不可能だった。心臓が大きく脈打つ様子が全身に渡って少女の身体を震わせる。さまよっていた視線はいつしか尚毅の肩の周囲で固定された。
 見るともなしに見る。記憶の彼と照らし合わせて推し量る。横髪が耳を覆い、後ろ髪は肩の向こうへと消えている姿に、そのとき真理は気が付いた。
「髪が伸びたのは、尚毅も同じね」


作品名:諸行無常 作家名:ぬるたろう