小説が読める！投稿できる！小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ！

タイトル；“ついに来た。”の中で、私が彼氏と籍を入れられない理由についての話を簡単に書いている。
その話を詳しく書こうと思う。

先ずは、私の親の離婚の話から…。

私のお母さんとパパ（私はこう呼ぶのでパパと書きます。チグハグな言い方となりますが、慣れてください。）は、同棲も含め四年ほど付き合っていた。

私には一つ上の兄がいる。

私が生まれる前に、お母さんははとちゃん（仮名）という女の人と友達になった。
お母さんの行きつけの服屋さんの店員さんだった。

話してみると年はお母さんの二つ下で、お母さんと中学も一緒だった。
お母さんもはとちゃんもどちらも中学の時のことを知らなかった。

私を生むためにお母さんは入院となった。
その時にお母さんの身の回りのお世話をしてくれた一人がはとちゃんだった。
パパは結婚して最初の七日間だけ家にいて、その後は麻雀漬けの日々を送り始めた。
家には寝に帰るかお風呂に入るかたまにご飯を食べるかくらいだったようだ。
なので、出産の前も後もパパは何もしてくれなかったようだ。
お母さんが私を出産して、一応パパは見に来てくれたようだった。

お母さんはそんな状況の中、意地でも頑張ったと言っている。

お母さんは人を家に呼んで、パーティをするのが好きだったので、パパも家にはいないし毎日のように友達を呼んでは料理を振る舞っていた。
そんなお母さんは旅行も好きで、たまにみんなと旅行にも行っていた。
もちろんパパは抜きで…。
それは、連れて行かないんじゃなくて、パパが“行かない。”と言うだけのことだった。
そしてそんな毎日を送っていた。

私が三才か四才の時に、いつも家にはいなかったはずのパパが、パーティに加わり始めた。
みんなで楽しく写っている写真もたくさんある。
その中にパパが楽しそうに写っている写真も、私が年齢を重ねる度に増えていった。

あんなに旅行を拒否していたのに、ある時からパパも一緒に行くようになった。


そして、私が五才くらいの時に、周りの人たちがお母さんに、
“あなたの旦那、はとちゃんと浮気してるんじゃないの？！”
と言われるようになった。
お母さんはそんな言葉を信じなかった。

お母さん曰く、
“確かに、その当時、パパははとちゃんには優しかったけど、まさかそんなことあるわけない。”
と思っていたとのこと。

パパは、はとちゃんを車で送ってくると言っては、二～三時間経って家に戻ってきていたけど、お母さんはそれでも何も疑うことはなかった。

ある日から、パパは、
“はとちゃんとデートに行ってくる。”
と髪の毛を解いて、おしゃれしてお母さんにそう言うようになったけど、お母さんは何も疑うことなく、
“いってらっしゃ～い！！”
と言っていたとのことだ。

そんな状況が一年ほど続いていた。

そして、知り合いがお母さんに、
“夜中、あなたの旦那とはとちゃんが、私の家の前を腕組んで歩いてたわよ。”
と言ってきて、ようやくお母さんはパパの浮気に気付いたらしい。

私のお母さんもパパもこんな感じの人。
お母さんはおっちょこちょいというか、素直というか…、人を疑わないというか…。
そしてパパは自由人かも…。

それから家の中は大変になって行った。

そして、パパとはとちゃんは駆け落ちをすることになって、家から出て行った。

それから私、お母さん、兄の三人暮らしが始まった…、でもそれはたったの三ヶ月…。
その三ヶ月だけは私の記憶にも残っていて、ひたすらひたすら楽しい日々だったのを覚えている。
その三ヶ月の間に、パパから毎日のように電話がかかってきて、
“お金を送って欲しい。”
とか、
“家具がないので、送って欲しい。”
とかの内容だった。
お母さんはお金は送らなかったけど、家具は家の中にあるパパのもの一式送ってあげたらしい。
お母さんが、
“結婚して一番パパと話したのは、その三ヶ月の電話だったと思う。”
と話していた。

そして、駆け落ちした先に、はとちゃんの両親が来て、
“妻子があるのになんていうことをしてるのか！！”
とパパは怒られたようだ。
このことは、離婚した後に、はとちゃんの両親がお母さんの実家に来て、両親から聞かされた話とのことだった。

私としては、どうしてパパだけ怒られたのだろうか…。
はとちゃんのしたことはどこへ…？！という気持ちになった。

駆け落ち先から帰って来ると、パパとはとちゃんとお母さん三人の話し合いがあった。
その話し合いに、仲介者としてお母さんの友達がいた。
その友達がパパに、
“あなたは自分の奥さんとはとちゃんのどちらを取るの？”
と聞いたら、パパは、
“どっちとも別れたくない。このままの関係がいい。”
と言ったと私はお母さんから聞いた。
私は開いた口が塞がらなかった。

どうしてだろう…、とても恥ずかしい…。

という無理な条件をお母さんは飲めなかったので、それから一ヶ月後、離婚となった。

そして私と兄はパパに引き取られることとなった。

そして、離婚してお母さんの実家にはとちゃんの両親がお詫びに来た。
お詫びとしてカニの缶詰一缶を持って来たとのことだった。
高級そうな缶詰だったようだ。
はとちゃんの実家は、大きな本堂がある宗教の家だ。
そしてそのはとちゃんの両親曰く、
“この缶詰は、本堂の神棚にお供えをしていたものなので、良いものです。”
と言って渡されたとお母さんから聞いた。

私はお母さんに、
『その缶詰どうしたの？！』
と聞いたら、
『えっ、もちろん、じいちゃんとばあちゃんとお母さんのみんなで美味しく食べたよ。』と言ってきた。
驚いた私は、
『食べたの？！』
と聞いた。
『もちろん。高級そうだったよ～。美味しかった～。』
と思い出したのかそう答えた。
『缶詰たった一缶って、何考えてるんだろうね。箱ごとくれないとおかしいよ。』
と私が言うと、
『あっ、本当ね～。あれが箱ごとあったら…、まだ食べられたのね…。』
とお母さんは惜しそうに言った。
『でも、はとちゃんの親は、自分の娘がしたことの重さって、カニの缶詰一缶にしか感じなかったのかなぁ～。そのくらいにしか思われてないのかとか考えると、複雑…。』
と私はいろいろ思いながらそう言った。
『宗教の中では、その缶詰一缶でも凄～～～く重いのかもよ。』
とお母さんは言った。

はとちゃんは私たちの家を救ってくれたのか、ぶち壊したのか…どっちだろう…。
宗教って分からないなぁ…と考える私だった。