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みゅーずりん仮名
みゅーずりん仮名
novelistID. 53432
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『 表計算 』

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「じゃあ、大学を出てからしばらくは、放浪の旅に出ていたと」
「はい」
「うーん・・・特に印象的な国はどこだったか教えてくれる?」
「そうですね、やっぱりアジアです」
「あ、そう」
「何しろ僕、顔がアレじゃないですか」
「あれって」
「俳優風っていうか」
「・・・そうだね」
「で、放浪してたんです」


「で、カジテツって・・・」
「家事手伝いです。あ、消防士とかではなくて」
「家事手伝いね、お母さんから何か習ったり?」
「きちんとテレビや本を見て、料理作ったんです!」
「そうです・・・か」


顔が良い男と女は、アホである。
私は何人もの人々を見てきたが、一概に奴らは顔を売りにしていることを売りにしているのである。
それで、私はとある男と組んで、会社を開くことにした。支度金は、各15万円である。つまり、面接のテナント料を二人で持ち、これから始める商売への支度金作りに励むことにしたのである。

といっても、大手会社の看板は無い。そこで、シャネルとチャンネルの様な会社名にし、若い奴らを使うことにした。しかし、やはり若い奴らは若い頃の私共とまるで変わらない。
何にしても腹立たしい奴らばかりだ。

そこで、私は男に提案をした。
人の換算表を作ろう。換算表というと?まず人は見かけ次第だから、手始めには見かけから。顔・スタイル・服装の三点を横に、髪型・姿勢・話し方の三点を縦に表を作る。うんうん。
そして、横軸と縦軸の交わったところを、点数にして換算し、上位3名を取る。うーん。
金は後から付いてくる。能力の高い奴らには、カモられる可能性も高い。何しろ、金ないだろ。見かけの良い奴を使って、金持ちになろうぜ。
すると、彼は頷き、さらに15万円を私に渡した。


「ついに、デビュー決定!!」

私達は、少し、涙した。どう転がっていくか分からなかったこの会社も、何とかなりそうだ。結局、私達の一月分の給料は、人の何年分もの給料をもぎ取る奴らを作り出すことになった。賭け事よりも遊びよりも仕事よりも、確実なお金の増やし方である。

後は奴らが独立宣言するまで、見ているだけでいい。
私が若い頃から、大人がやり続けてきた方法だ。
努力や汗や涙なんて、お金に替わる訳じゃない。

彼らが手術代をせびりに来るまで、私の胸が痛むことはない。
笑顔は常に、金を生むが、年齢制限には際限がない。
私は手を伸ばし、顔の傷を触った。男に殴られただけで、他に良いことは何も無かった。