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月とコンビニ
月とコンビニ
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月とコンビニ

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「月とコンビニ」
【著】山田⇒松田

○男
○女
○大統領


雨が降っている。
廃墟となったコンビニには、胸に鉄パイプの刺さった少女が座っている。

☆男イリ、雨宿りである。

女 いらっしゃいませどうぞ、ごゆっくりなさっていってくださいな。
男 …。
女 なにかおさがしですか。
男 …。
女 なにかおさがしですか。
男 …。

○男、リュックから水筒を取り出し、雨水を溜める。

女 いらっしゃいませどうぞごゆっくり、なさっていってくださいな。
男 …。

○男、水筒の水をひと口飲むと座り、地面に散らばっている雑誌を拾ってめくる。

女 いらっしゃいませどうぞごゆっくりなさって、いってくださいな。
男 …。

○男、雑誌の1ページを千切ると、細長く丸めて口に咥え、煙草の様に火をつける。

女 なにかおさがしですか。
男 あんた、名前は。
女 はい、エジソン社製、N+207型です。
男 …。
女 はい、エジソン社製、N+207型です。
男 …。
女 なにかおさがしですか。
男 ここは。
女 ここはミセス・ビュッフェ、クイーンズブリッジストリート店へようこそ。いらっしゃいませどうぞごゆっくりなさっていって、くださいな。はい、エジソン社製、N+207型です。
男 クイーンズブリッジストリート。
女 ここはミセス・ビュッフェ、クイーンズブリッジストリート店、へ、ようこそ。
男 マンハッタンへ行きたい。
女 なにかおさがしですか。
男 マンハッタンへはどっちに向かえばいい。
女 モックバァクステイションへは、はい、エジソン社製N+207型より、へようこそ。
男 モックバァク、地下鉄か。
   ○男、リュックから簡易コンロを取り出し、湯を沸かし始める。
男 あんたはなぜここに。
女 いらっしゃいませどうぞ、ごゆっくりなさっていってくださいな。
男 誰もいないぞ。
女 マンハッタンへは、モックバァクステイションより、おさがしです。
男 ここにいたいのか。
女 なにかおさがしですか。
男 …。
女 なにかおさがしですか。
男 待ってるのか。
女 ビーと。
男 ん。
女 はい、エジソン社製、N+207型です。どうぞ、ビーとお呼びくださいな。
男 …。
女 なにかおさがしですか。
男 …。
女 ここはミセス・ビュッフェ、クイーンズブリッジストリート店、へ、ようこそ。
男 ビー。
女 はい、店長。
男 …ビー。
女 もう、何ですか。
男 …マンハッタンへはどう行けばいい。
女 マンハッタンなら、モックバァクステイションから地下鉄に乗ってくださいな。
男 もう、地下鉄は動いてないよ。
女 夜分ですものね。
男 …ああ。
女 店長、今夜は休憩していかれてくださいな。
男 …。
女 明日のお昼に出れば良いでしょう。
男 明日も。
女 はい。
男 地下鉄は動いてないんだよ。
女 もう店長、地下鉄がお休みの日があるなんて聞いたことがないですよ。
男 あんた。
女 はい、エジソン社製、N+207型です。いらっしゃいませどうぞごゆっくり、なさっていってくださいな。
男 あんたは、俺だ。
女 なにかおさがしですか。
男 俺。
女 なにかおさがしですか。
男 …。
女 はい、エジソン社製、N+207型です。
男 …。
女 はい、エジソン社製、N+207型です。
男 ビー。
女 はい、店長。
男 …ビー。
女 もう、何ですか。
男 雨、止まないな。
女 少々、気がめいりますね。
男 気が、めいるのか。
女 ええ、こんな私でも店長、気は、めいりますよ。
男 俺もだよ。
女 本当ですか。
男 ああ。
女 ふふ。店長、今夜は休憩していかれてくださいな。
男 ああ。
女 お支度をしましょうね。
男 ああ、いいんだよ、ビー。
女 でも、店長。
男 いいんだ、いいんだよ、ビー。お話をしよう。
女 お話を。
男 ああ、お話を。
女 素敵です。

○男、沸いたお湯でどろっとした珈琲を淹れる。

〇男はコーヒーを飲み、外を見やる。

男 ビー。
女 はい、店長。
男 …ビー。
女 もう、何ですか。
男 満月って知ってるか。
女 なにかおさがしですか。
男 空に、あるんだ。まぁるい、月。
女 私には、わかりません。
男 すべては、この雑誌から始まったのだろう。
女 ひゃく、ごじゅうえんです。
男 少々古いが、大統領のホログラムデータだ。
女 ひゃく、ごじゅうえんです。

●大統領入り

大統領 すべて、の国民に告ぐ、月、の開拓を開始、する。
男 始まったんだ。
女 楽しい、です、ね。
男 次は、この雑誌だ。
大統領 朗報、です、アンドロイドは、無事、月へと送られ、ました。既に開拓、は始まっております!
男 二週間だった。俺たちは希望に満ち溢れていた。
女 楽しい、です、ね。
男 それから一ヶ月後のことだ。
大統領 みな、さん! 間に合、いました。居住空間を一部確、保。第一次移住、計画を実行に写し、ます。
男 この時、数千人が移住したらしい。
女 楽しい、です、ね。
男 この夜は、満月だった。
女 なにかおさがしですか。
男 その後は毎月、数千人ずつ移住していったよ。

●男は言いながら次の雑誌を手に取り、開く。

大統領 国民の皆さん、残念なお知らせです。計画は失敗。第一次移住計画は中止。中止とします。
男 終わりの始まりだった。
女 楽しい、です、ね。
男 既に数億人が移住した後のこと。なにがあったのか、なぜ中止になったのか。

●男はまた次の雑誌を手に取る。

女 お話。素敵です。
大統領 申し訳ございません。全国民の皆さん、地球上の皆さん、申し訳ございません。
男 大統領の最後のホログラムデータだよ。この時期は、雨が多かった。
女 少々、気がめいりますね。
男 少々、か。いや、このときの気分は絶望と言っても良いだろうね。
女 休憩をしていかれてくださいな。
男 ああ、いいんだよ。続きがある。
大統領 これより、数日の内に月は消滅するでしょう。移住計画は全て失敗。我々に残された道は閉ざされました。
男 ビー。
女 はい、店長。
男 …ビー。
女 もう、何ですか。
男 人間は増えすぎていたんだ。それは地球に収まらなくなるほどに。
女 満員です。
男 あぁ。
女 ふふ、楽しい、です、ね。
男 ビー。
女 はい、店長。
男 知ってるか。
女 すみません。
男 月がないと、生き物は生きられないんだ。
大統領 既に鳥類の50%の絶滅を確認。原因不明の自殺者は30万人を超え、現在対策中となっています。
男 …ビー
女 もう、何ですか。
男 人間は後どのくらい生きているのだろうな。
女 なにかおさがしですか。
男 マンハッタン。
女 マンハッタンへは、モックバァクステイションより、おさがしです。
男 マンハッタンで、家族と暮らしていた。
作品名:月とコンビニ 作家名:月とコンビニ