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超絶勇者ブレイブマン その25

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 山中の石階段を登り始めて、10分後。ようやく登り切って、目的地の別荘が目の前に現れた。その別荘は一般的なログハウスで、木でできた階段を3段登れば、その目の前に玄関扉がある。
 また、その玄関扉の上には2階に繋がるベランダも確認できた。玄関扉の横や、別荘の側面の壁には窓があり、当然ではあるが、日が差すような設計になっている。別荘と言うだけあって、そこまで大きな家ではなかったが、一晩過ごすだけならば何も問題はないだろう。
「しばらく使われていないので、少し埃っぽいところもあるかもしれません。私がすぐに掃除致しますが、皆様はのんびりとご休憩なされていていいですよ」
「掃除するんだったら、私手伝いますよ」
「いえ、それが私のお仕事ですので。お気になさらずに」
 愛が掃除の手伝いを申し出たが、にこやかに断られてしまった。旦那様がいるわけではないのだから、全て自分でやらなくても怒られはしないだろうにと思ったが、面目を立てることができないほど、愛は子供ではなかった。
「それじゃあ、とりあえず俺たちは荷物を置いて、のんびりさせてもらおうか。可恋ちゃんはもう車酔いは大丈夫?」
「しばらく歩いたし、もう平気かな。愛ちゃん、ありがとう。勇気くんも心配してくれて、ありがとう」
 そうして、みんな幸子に案内されて、ログハウスへと入っていった。中は外から見た印象よりも広く感じた。お手洗いはもちろん、バスルームまで用意してあるようだった。
 置いてある家具は、テレビにクーラー、冷蔵庫。机に本棚と物置、それから掛け時計などがあり、居間から見える範囲にキッチンスペースもあった。
 荷物を隅の方に置いて、長方形で木製の机を囲んで、みんなで床に座った。そこに幸子がどこからか水で濡らした布巾を持ってきて、机を綺麗に拭いた。しかし、もちろん他にも掃除するべき箇所はあるようで、今度はひとりで別荘の中を回り始めた。
「それにしたって、もうあの階段だけでもくったくただぜ。もう寝るまでここで駄弁ってればいいんじゃねえか?」
「それじゃ駄目だってば。ちょっとしたら、山中を散策しに行こうよ、希望くん」
「ただの山だから、見てもつまんないと思うけどな」と正義が言うと、希望はいいことを思い付いたという感じで手を打った。
「せっかくだから、全員で回るんじゃなくて、ふたり一組で回らないか?」
「え? せっかくなのにか? みんなで回った方が楽しいと思うぞ」
「勇気先輩、多分お兄ちゃんやらしいこと考えてますよ。女の子とふたりきりになりたいだけでしょ」
「馬鹿言うんじゃねえぞ、妹よ。だが、全く持ってその通りだ! どっちも好みのタイプじゃないが、デート気分でも味合わなきゃ、俺の脚は動かねえ」
 どっちもと言うのは、愛と可恋のことだ。幸子は今の話で言う“みんな”には入っていないし、夢は希望にとっては実の妹だから計算外だ。
 自分勝手で失礼な主張だが、目的を誤魔化していい方便を思い付くほど、希望の頭は良くなかった。いっそストレートに自分の欲望を吐き出した方が上手くいくということを彼は自分の人生の中で痛感していた。
「でも、どうやって組む相手を決めるんだよ。好きな者同士でなら、誰もお前のことは選ばないぞ。夢ちゃんなら、まあ分からないけど」
「私だって、お兄ちゃんとなんかごめんですぅ。一緒に行くんだったら愛先輩がいいです!」
 勇気でさえも呆れ顔だったが、希望に駄々をこねられても面倒臭いだけだったので、可恋が持ってきたメモ帳を千切ってくじにして、組む相手を決めることにした。キッチンスペースには、白いビニール袋があったので、そこにくじを入れることにした。
 くじは全部で6枚で、それぞれに1〜3までの番号が書かれた。同じ番号はふたつずつあり、同じ番号を引いた者同士が組むことになる。
 小さく折り畳んで番号が見えないようにしたくじをみんなでビニール袋に入れて、くじが出ないように激しく振った。これでもうどのくじがどの番号なのかは誰にも分からない。こうして、運命のくじ引きが始まった。