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私の読む「宇津保物語」 國譲 中ー2-

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 内裏の勤務で疲れ切ったので、貴女を迎えに藤壺の処へ寄ったときに、貴女は、はしたないことを仰って、一緒に帰ろうとなさらなかったが、藤壺は后になるお覚悟でしょうか、私に部屋を用意してくださったのに、貴女は出てもいらっしゃらないで、私を追い出そうとなさったこと、忘れることが出来なくて、あの時の辛さを思い出しています。

 貴女や藤壺が音楽を楽しまれた宵に、私は外に立って聞いていましたが、味気ないもので、藤壺の声が近くに聞こえましたが・・・・・・・」

 など色々と仰って、
「三条で両親が貴女を桂にご案内しようと言ってました。一日二日涼みに、姉妹の宮達とご一緒で行かれては」

 一宮
「気分が悪いので、何処へも行きたくはありません」

「何でその様に、気にすることはありませんよ」

 といって仲忠は十九日頃がよいと考える。

(二宮と懸想人の件、誤り、複写抜けが多くて意味が通じないところがある)

 忠こそ律師も十日ほど滞在してお帰りになるというので仲忠は

「では、先日申し上げました水の尾へは必ずご一緒に参りましょう。今後はそちらからもお尋ね下さい。此方からもお伺いいたします」

 と、言ってお弟子達に衣類を包んで渡した。律師には衲(たい)の袈裟に菩提樹で造った数珠を添えて差し上げた。

 そうして桂行きの十九日になった。車十二台、糸毛車には宮達、犬宮を抱いて孫王女房、乳母、次々に女房達、髫髪(うない)、下仕(しもつかえ)(ないしもつかい)、弾正の宮達、右大臣兼雅、右大将仲は一つの車に、仲忠の母内侍督、女車六台を仕立てて出発する。左大臣正頼も引き続いて参加されたので、正頼一行の車も合わせて二十台の行列となった。御前を先行する車は宮腹、殿腹の関係者が全員参加して数が分からないほどである。

 男の車は御簾を上げて出衣して、三条大宮から桂までの間笛を吹き琵琶を鳴らして進行する。

 桂殿に到着して、神殿の南面を客人の正頼のために用意をし、西面に内侍督、中を一宮、東を二宮、その姉妹達、それぞれの部屋の前に車を着けて下車をされる。一宮は、

「母の仁寿殿がお出でにならないのは残念です。こんなに風流なところですのに」

 舟が桂川を上り下りするのを見て興味を覚え、苦しさを忘れて起きあがって見てのを仲忠が見て嬉しく思った。

 犬宮が可愛い様子で人前にお出になったので、仲忠が慌てて奥へ抱いて入る。正頼はその姿を見て犬宮に、

「もっとこっちへいらっしゃい、仲忠は女好きだからね」

 と、言って御簾の前に寄って色々な興味のある物を取り出して犬宮を呼ばれると、すぐに這いだしてきて正頼は上手に抱き上げられた。

 仲忠は正頼が犬宮を御覧になるのは何とも思わないが、お客としてお出でになった宮達が犬宮を見るのが嫌で苦しく思った。

 犬宮は正頼が抱居て部屋の中を歩いたり面白い玩具を取り上げて与えたりするので、すっかり正頼に懐いてしまい、人見知りをしない。祖父の兼雅が、

「あっけないことよ、犬宮を呼んでみよう」

 と、色々な玩具を手にして一宮や内侍督のを櫛を入れた箱を手にして懐に入れて持っていって、犬宮に渡すと喜んで兼雅に抱かれた。兼雅は、

「世の中の子というものは、天下を尋ねても、女の子は親と睦まじく、男の子は疎ましいものだ。

 仲忠朝臣は、男でも特別で、親の私はとにかく可愛いと思った。それでも、この犬宮を今日まで見ることが出来なかった。こんなに可愛い女の子を今まで見なかった。

 春宮に仕える梨壺は、年頃疎遠で、殆ど会いもしなかったが、その生まれた子供は誕生の日から見ている。

 今日もこの犬宮を、大事がって私に見せまいと思っているらしいが、血のつながりは不思議なもので、犬宮の方から寄ってきた」

 と言って懐に犬宮を入れて奥に向かっているので、」誰も見ることが出来ない、

「仲忠の北方一宮が体調が優れないので涼みを取ろうと桂川へ案内しましたので、そちらには失礼を致しました。
 これは乳母達の料理にお使い下さい」 

 と、わざわざ兼雅自身で文を書かれた。

 夫人の中の君には、

「この頃は如何お暮らしでしょうか、近いのにご無沙汰がちでありますが、どうしているか案じています。お会いしなくなって久しくなります。さてこれは内侍督が手ずから獲った魚です。貴女にあげた甲斐無くいつもの人に分け与えてしまいなさんな、

 君がため天の河原に釣すとて
月の桂もをりくらしつる
(貴女のために天の河原で釣りをすると言って、月の桂も折りなどして一日暮らしてしまいました)

 ということで、今日は」

 と書いて「これを御覧」と北方にお見せになる。北方内侍督は、兼雅の中君への文を読んで、
「まあ上手いこと言ったものだ」

 満足げに兼雅に戻すので、兼雅は北方の検閲済みの文を魚と共に巻いて中君に差し上げた。

 こうして音楽やその他の遊びをして一日が終わり、日がようやく落ちようとする頃に、主人の兼雅が土器を手にして弾正の君に差し上げ

 行く水と今日見るどちのこの宿に
いづれ久しとすみくらべなん

(今日お出で下さったお客様方よ、幾久しい桂川の流れと比べるように、この宿にいつまでも住んでください)

 弾正宮は土器を取り酒を飲み干して、仲忠に回すとして、

 水の色は君もろともにすみ来とも
我らは人の心やはする
(桂川の水はいよいよ澄み、その水と共に貴方は桂殿に幾久しくお住みになろうとも、仮に宿った私達はそういう心になれません)

 仲忠

 水は先づすみかはるともまとゐゐる
今日のならしは何時か絶ゆべき
(水は先ず澄んだり濁ったりしても、今日の団欒の慣例は何時までも続くでしょう)

 と詠って女一宮にお渡しすると、

 三千代経て澄むなる川の淵は瀬に
      なればぞ人の心をも知る
(三千年もの久しい御代を澄んで流れた川の淵が瀬に変わった時にこそ、人の真実も知ることが出来る)

 弾正の宮

 人はいさ我が身にかなふ心だに
      行先までは知られやはする
(自分の自由になる心でも遠い将来どう変わるか、そこまでは予測できない。まして人の心などは分かったものでない)

 八の宮(弾正の宮の弟)

 我らだにむすび置きてば行水も
人の心も何か絶ゆべき
(私達さえ固く約束しておけば、行く水が変わらないように、人の心も変わる筈がない)

 と、詠うと仲忠は、
「よく詠ってくださった。貴方の前のお人達は縁起でもない歌を詠って嫌ですね」

 と、。言ったので一座はどっと笑う。

 こうしているところへ、赤い色紙に書いて常夏の花に付けたのを使者が持ってきた。弾正の宮が、
「どちらからか」

 と、問われると、使者は
「藤壺のお方から宮のお方に送られたものです」

「私がその宮である」

 と、受け取って文を読む、