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超絶勇者ブレイブマン その22

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 4月最後の金曜日。いつものようにお昼休みには、屋上で勇気たちが弁当を食べていた。空は曇り模様であったが、どうやら雨は降らないらしい。
「わー、可恋ちゃんのだし巻き卵おいしそうだね。一個ちょうだい」
「うん、今日は上手く作れたからね。はい、あーん」
 あーんと開けられた口へ、可恋が箸で出し巻き卵を運んだ。傍から見ていると、本当に仲が良さそうで微笑ましい光景だった。
「正義の弁当はいつも豪華だな。親に作ってもらってるのか?」と訊ねたのは勇気である。
「うちの親に息子の弁当作ってる暇なんかねえよ」
「じゃあ、自分で作ったのか」
「そんなわけあるか。別に誰だっていいだろ」
 正義は相変わらず素っ気ないが、誰が弁当を作ったのかは本当に言いたくないらしい。恥ずかしいというより、驚かれるのが面倒臭いという様子であった。
「それにしても、可恋先輩は料理が上手いんですね。私はどうしても家庭的なことは苦手で……」
「でも、中学に入ったばかりの頃は私も全然だったよ。毎日お弁当作ってたら、そのうちに上手くできるようになって。夢ちゃんも毎日お料理すれば、きっと上手くなるよ」
「そんなことより、なんでしれっといるんだ、我が妹よ」
「えー。お兄ちゃんこそ、初めは誘ってもないのに来たって聞いたよ」
 夢はぶーっと頬を膨らませた。夢がお昼休みに屋上に来たのは、今日が初めてであった。
「私が誘ったんだよ。夢ちゃんとも仲良くなりたいなって思って。それにみんなで相談したいことあるし」
「相談って何?」
「ふっふっふ、よくぞ訊いたニャ、ブレイブマン! そう、この娘はこのたび私の手足になって活動してもらうことになり、世界征服計画を話そうと――」
「それをみんなに相談してどうすんの」
「まあ、冗談はさておき、明日からゴールデンウィークだから、みんなでどこか遊びに行きたいなって」
「そっか、そう言えばそうだったね。でも、私たちだけじゃ行けるところにも限界があるよね」
「じゃあ、海――」
「却下。海にはまだ早いよ。というか、水着姿見たいだけでしょ、希望くん。それより山にでも行って、おいしい空気が吸いたいよ」
「にしても否定早いだろ。もっと聞けよ、俺の話を!」
「山なら岐阜県に親父の別荘があるけどな」
 正義はぼそりと呟いたつもりであったが、それを愛が聞き逃すはずもなく鼻息を荒くして問いかけた。
「山? 別荘!? ……ひょっとして、せいぎくんの家ってお金持ち?」
「いや、別に。普通よりちょっと上ってくらいだと思うけど」
「それで、その別荘にお邪魔しちゃってもいいのか?」と勇気が言った。
「まあ、どうせ使ってないし、親父に一言言えば大丈夫だと思うけど……。ちょっと待って、親父に電話してみる」
 ……親父に話せば、多分あいつにも伝わるだろう。しかし、どうせ試すなら早い方がいい。正義はそう思い、父親に電話を掛けた。
「親父、今ちょっと大丈夫か? いやさ、確か岐阜に別荘あっただろ。そこを貸してもらえないかなって。なんでって、まあクラスメイトとちょっとな。
 え? ああ、そうか。おい、佐藤。いつなら空いてるんだ?」
「私はいつでもいいけど。道場も休むつもりだし」
「俺も道場があるし、剣道部の活動もあるけど、どっちも休んでもいいって言われてるし、いつでもいいよ」
 他のみんなは特に他の予定はないようであった。可恋の演劇部はゴールデンウィーク中の活動予定はない。夢は兄と同じく帰宅部だ。そんなわけで、明日にでも行こうという話になった。
「それと、せっかくだから一泊くらいしたいよね」
「でも、愛ちゃん。私たちだけじゃ駄目でしょ。保護者がいないと」
「保護者か。それもちょっと話してみる」
 そう言って、正義は通話に戻った。話してみるとは、正義の親が保護者として来てくれるということかと思いつつ、勇気たちはその電話が終わるのを待った。
「電話終わったぜ。一泊しても問題ないって。明日はうちの家政婦が来るから」
「へえ、それならよかった、って家政婦!? せいぎくん、家政婦のいる家って、普通よりちょっと上くらいのお金持ちなの!?」
「だから驚かれると思ったんだよな……。まあ明日は空気みたいなものだと思って、家政婦のことは気にすんなよ」
 そうして、明日の朝に名古屋駅の噴水広場で集合することとなった。そこに家政婦が自動車で迎えに来てくれるらしい。それにしても、7人乗りの車を簡単に動かせるあたり、やっぱりお金持ちなのかなと愛は思った。