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アザレア少女

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―プロローグ― 0.「すき」って何






まだ私が赤子の頃、両親に捨てられて、というよりは孤児院の前に置き去りにされて両親の顔や名前すら知らない


そんな私が分かるのは自分の名前と誕生日だけ
その二つは紙に書いてあり私と一緒に籠の中に入っていたらしい
だから私の親に貰った形見のような存在はこの名前と私自身なのだ
だから親を探そうと思えば私の血縁者を探してもらえれば顔と名前くらいは分かると思う

でも私はそれをしようとは別に思わない
あまり必要性を感じないし、あちらにはあちらの事情があるだろうし。



そんな置き去りにされた私を見つけてくれたのはその時まだここの孤児院に勤めていた職員だった
早朝その職員が外に出た時、門の前に籠がポツンと置いてあり私はスヤスヤと眠っていたそうだ
我ながら図太い神経の持ち主だと思う
普通外でそんなスヤスヤと安心して寝ていられるもんではない
大抵の赤子は泣き喚くだろう




これが私の知っている過去
これが私、薊桐朱理という人間の過去

私が今ここにいる理由となった、原点





幼い頃親に捨てられたからか、はたまた私の性格や捉え方が問題なのかそれは分からないが、私は「すき」という感情というか相手を思う気持ちがあまり良く分からない

「好き」って何?「愛」って何?
どういうもの?どんな感情?「like」と「love」では違うの?




よく、分からない



作品名:アザレア少女 作家名:水鳥 涼