小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

エッセイ集:コオロギの素揚げ

INDEX|33ページ/33ページ|

前のページ
 

コオロギの素揚げ



「コオロギが食べられる」という言葉が突然耳に届いた。ボーッと聞き流していたラジオ番組からである。続いて、「きもいてん」と言っている。
 昆虫食には以前から興味を持ち、入手方法を調べたことがある。
 最も食べやすそうなのが、コオロギを粉末にしてパスタに入れたもの。素揚げでは、黒アリ、コガネムシ、バッタ、ゲンゴロウ、カメムシ、カブトムシ、サソリ、タランチュラなどなど。結構な価格の上送料までかかるとなれば、食べることができるのか、ほとんど残してしまうことになるのか分からないことに、お金にシビアな大阪人としては購入をためらったのである。
 その昆虫食を売っていると、ラジオのDJは、サテライトに集まっている聴衆から聞き出していた。

「きもいてん」を検索すると、梅田ロフトで7月20日から9月1日まで「キモい展」を開催中、とある。火・木の3時から4時まで昆虫食を試食できる。
 明日が火曜日。夏休みに入ったばかりではあるが、各地で激しい雨予報が出ている。混雑より雨が良い。出かけることにした。

 5種類の昆虫食を会場の外で売っていた。試食目的で電車に乗ってまでやってきたのである。会場に入らねばならない。“キモい”動物にも興味はある。入場料を支払った。
 爬虫類や虫が苦手な人にとってはキモいのであろうが、普通に見られる生き物であり、それをデカくしたトカゲや、ムカデ。カエル、ヘビ、サソリ、など。キモいことないやん、と思いつつ最後の展示物を見てギョッとした。
 心の中で“ウェ〜ッ”。
 数知れない、普段見かける小さなゴキブリが重なり合って、小さなゴキブリは元気にうようよと動き、仲間の小さなゴキブリの上を小さなゴキブリは駆け回っていたのである。
 それを見てから、次が試食会場であった。

 やはり、今日は人が少ない。開始時刻まで待つこと数分。
 紙皿に袋から出されたのは・・・なんであるか教えてもらえない。高価なタランチュラやサソリ、カブトムシであるはずはない。
 各自がトングでひとつつまんで、手皿にのせていく。少し大きそうなのを選んで取ったが、足が取れてしまった。明るいところへ出てまじまじと見つめる。コオロギらしい。
 先ほどのゴキブリの姿を脳裏から消し去って、それとどことなく似ている小さなコオロギを口にほおり込んだ。
 ためらいながら、噛んだ。小エビかな? 沢ガニかな? とイメージして。

 小さなコオロギ1匹では、味も食感もよく分からない。
 コオロギの袋と、ゲンゴロウ・ガムシの袋を買った。次の植物調査の時に披露するつもりである。さて、食べてくれるだろうか。話題作りとしてで良いのだが。あるいは、ほとんど残ってひとりで食べなくてはならない羽目になるのだろうか。
 高タンパクでミネラル豊富、低カロリーの健康食品、昆虫食。


                   2019年 7月25日