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新撰組異聞__時代 【前編】

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 男たちは、御殿山から駆け下った。
 その後ろを追ってくる歳三と総司の距離は、かなりあるが気は緩められない。
 「…っ」
 「…お前たち」
 彼の前に、その男は驚いて立っていた。
 「桂さん」
 「あの火事、お前たちの仕業か?久坂、高杉」
 「桂さん、我々は長州の面目にかけて異国を討った。幕府は異国のいいなりだ。あなただって、このままじゃいけないのは理解っているだろう」
 「ここで、お前たちを役人に渡せないな」
 「桂さん…」
 そんな事をすれば、長州に対する幕府の睨みは一層きつくなる。今はその時ではない。小五郎は道を開けた。
 そして、すこし間をおいて歳三たちと会うのだ。
 「桂さん…、あんたがどうして…」
 「偶然だよ、土方さん。しかし、私の勘は当たったね。君とはもう一度会う気がすると。何かあったのかい?」
 「ここに怪しい人間が数人来ただろう」
 「ああ、来たよ。私に気付かずに走り去ってしまった。彼らが何かしたのか?」
 「焼き討ちをしたのさ」
 「ほぅ。空がやけに赤いと思ったのはその所為か。土方さん、君とはまた会いたいね。今度こそ、ゆっくりと酒を呑もう」
 小五郎は、にっこりと笑って去っていく。
 「土方さん、知り合いなんですか?」
 「桂小五郎、練兵館の師範代だ」
 「へぇ」
 ___今度ゆっくり呑もうぜ。
 二人が交わした約束。だが、歳三も小五郎も対立する立場になろうとはこの時知る由もなかった。
 そしてこの御殿山の事件は、イギリス公使館焼き討ち事件として幕末史に名を刻む事になるのである。