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悠里17歳

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5 ぶっつけ本番



 お兄ちゃんが今から収録するのは、『学生の、学生による、学生のためのラジオ』がキャッチコピーの『カレッジ・ヌーン・ネットワーク』通称CNNという番組だ。かれこれ七年前にこの大学の学生で現在モデル兼タレントとして活躍中だったお姉ちゃんの親友が企画したのを発端に、当時の深夜枠からお昼に移り現在も続いている(当時はCNN=カレッジ・ナイト・ネットワークだった)。仕事を持っている現役の大学生が企画放送するのがウリなのだが、四代目パーソナリティでカメラマンとして活躍している渡利さんという学生が急遽出られなくなって、OBでかつ三代目パーソナリティのお兄ちゃんに出てもらうことになった。

「でも何をやったらエエの?」
 言われるがままに椅子に座ってヘッドホンをセットした。以前にお兄ちゃんのところへ遊びに来た時にラジオは聞いたことがあるので番組そのものは知っているが、いきなり自分が出るとなるとどうしたらいいのか全く分からない。
「何をやってもエエよ。俺がちゃんと振るから」
そう言った後に英語で付け加えた。
「俺、台本とか読んだことないから」
「それじゃ始まりまーす、3、2……」
「え、えっ」
心の準備をする間もなく音楽が流れ出した。聞き慣れたオープニング、不思議とテンションが落ち着いてきた。

  「ゴールデンウィークの真っ只中ですが、皆さんいかがお過ごしですか?こんにちは、NAUGHTの倉泉です――」

 台本無しに調子よくしゃべるお兄ちゃん。家にいる時とは違う顔をしている、仕事をしている時の顔だ。切り替えが速いのは神戸にいた頃のお兄ちゃんと違うところだ。

  「今日はレギュラーの渡利がUターン渋滞に巻き込まれちまいまして代わりにわたくし……」

 テンポよく急遽代役を務める経緯を冗談を交えて説明する。噛まないのは経験なのか。

  「まずはこの曲、文京区の高校生……さんからのリクエスト――」

 私も知っているゴリゴリのギターサウンドが流れ出すとお兄ちゃんは音声のスイッチをオフにして私に微笑みかけた。
「ほいでよ、悠里」今は声を出していいことをゼスチャーする。
「次はコーナーで埋めるから、悠里は思ったことを言えばいいから」
「ホンマにそんなんでエエの?」
「エエよ。俺もあんまり考えてないから」
お兄ちゃんは首でリズムを取りながら葉書を繰っている。次のコーナーで使う質問をどれにしようか選んでいる。それでいて急な代役でも動じない様子で、いつ何時でも対応ができることを無言で私に教えてくれているようだ。

作品名:悠里17歳 作家名:八馬八朔