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私の読む「枕草子」 61段ー80段

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【六一】

 滝は、おとなしの滝。紀伊国牟婁郡。
 布留(ふる)の滝。大和国山辺部布留川の上流にある。この滝は花山法皇がご覧に出かけられた目出度いものである。
 那智の滝は熊野にあっるということを聞いているが、新宮・本宮・那智を熊野三所と称し、修験道の霊地とされた。有り難いことである。
 とどろきの滝は、陸前国宮城郡今市。名前から如何にも喧しいし恐ろしいであろう。
(ネットで探しましたが見当たりません。ご存じの方がいらっしゃれば情報を下さいませ)

【六二】

 河は、飛鳥川。古今集、十八雑下、読人しらず
「世の中は何か常なる飛鳥川きのふの淵ぞ今日は瀬になる」(933)
 淵や瀬が決まらなくて、どうしたのだろうと不思議である。

大井河。(山城国嵐山の麓。平安時代舟遊で名高い)
 おとなし川(紀伊国牟婁郡。前段おとなしの滝の流)
七瀬川(所在未詳)

 耳敏川(みみとかわ)。また、何事をこましゃくれて聞きたいというのか、と可笑しい名前。(拾芥抄に「朱雀門ノ前三条ノ南」とある)
 玉星川(陸奥国にある歌枕) 
細谷川(細き谷川の意)
つぬき川(梁塵愚案抄に美濃国とある。略称貫川。催馬楽「貫川の瀬々のやはら手枕、やはらかにぬる夜はなくて、親さくる妻」)

 澤田川などは催馬楽(さいばら)「沢田川袖つくばかり浅けれど、恭仁(くに)の宮人や高橋渡す」
古代の歌謡の一を連想を呼びおこさせるのであろう。

 名取川(陸前国名取郡。「名」は評判の意)どのような評判があるのか聞きたいな。
 吉野河(大和国吉野郡)

 天の河原「古今集、九羇旅「狩り暮したなばたつめに宿からむ天の川原に我は来にけり」(418)と、業平が詠むとは意外だ。


 清少納言は博学の人ですので、枕草子の文中の短い文でも、漢籍や短歌等からの引用が多く、それも全文でなくて、ごく短い文を例えに持ってきている事が多い。
 
 私はそれを、参考としている日本古典文学大系の頭注、補注、そして、ネット色々なところから引っ張り出して、本文に入れたり、コメントで紹介したりしています。

 私自身が知りたいので、文章が読みづらくなっても、私が理解できるように、原書は単文でも長文になってしまいます。

 また、物品については写真または絵でもって見ないと、どうも納得が出来ませんので、申し訳ありませんが、ネットの多用をさせていただいています。

 右の点よろしくご理解下さいませ。

【六三】

 女と別れて暁に帰ろうとする男は、服装など至極きちんとして烏帽子の紐や髪の元結を固く結ばなくてもよかろう。
 上手にしどけなく、堅くなく、直衣や狩衣が乱れていても、誰も見ていないから笑いも誹りもしないよ。

 男は明け方の姿こそ風情がなければならない。男がむやみに渋って起きずらい風にしているのを、無理にすすめて
「夜が明けてしまった、なんと格好が悪いこと」
 などと言われて男がほっと嘆息する様子も、成程あきたりず大儀なのでもあろうよと見える。

 指貫なども坐ったままで着ようともせず、
まず女のそばに寄っていき夜に約束した言葉を女の耳に入れて、何の手管を使うこともないが、帯を締めてくれる様子である。

 格子を押し上げ、妻戸を開けて、
「このまま一緒にお前を連れて行きたい、離れて暮らす昼の間、どんなに待ち遠であろう」
 などと口にしながら、すべるように出ていったなら、女も自然見送る気になって、名残が尽きないだろう。

 思い出す所があるらしく大層さっぱりと起床してばたばた騒ぎ立てて指貫の腰をがさごそと強く結び直し、上衣も狩衣の袖をまくり上げてがさりと入れて、帯をしっかりと結び直して跪いて、烏帽子の緒をきゅっと締める。

 四つんばいになって、昨夜扇、畳紙(たとうがみ)などは枕元に並べて置いたのであるが、男も女も動き回ったので自然に散乱して、探すけれども暗いので、よくは見えない。

 どこだ、どこだとその辺を叩きまわり、探り当てて扇を二つ三仰いでみて、懐紙を差し込んで
「それでは帰るから」」
何って言う。

【六四】

 橋は。あさむづの橋・長柄の橋・あまびこの橋・浜名の橋・一つ橋・うたたねの橋・佐野の舟橋・堀江の橋・かささぎの橋・山すげの・をつの浮き橋・一すじ渡したる棚橋・
一筋では狭い気がするが、名前が聞いて可笑しい。

【六五】

 里は。
 逢坂の里・ながめの里・いざめの里・人づまの里・たのめの里・夕日の里・つまとりの里、妻を人に寝取られたのかな、自分がとって妻としたのだろうか、面白い。伏見の里・あさがほの里。

【六六】

 草は。
 菖蒲(さうぶ)・菰(こも)・葵(あふひ)
神代から草木の花や枝を髪や冠に飾る、挿頭
となっているので大変に神々しい。二葉葵の葉そのものの形も大変に面白い形である。

 おもだか、面高の意に解するとおかしな草である。心のたかぶること。高慢。

三稜草(みくり)・蛇床子(ひるむしろ)・苔(こけ)・雪間の若草・こだに・かたばみ、紋様に用いる、ほかの草より変わっている。

 あやふ草は、倭漢朗詠集、無常、羅維作詩
「観身岸額離根草、論命江頭不繋舟
(身を観ずれば岸の額に根を離れたる草 命を論ずれば江の頭に繋がざる舟)」
(ある人が虎に追われている、岩上で逃げる術がない。千仞の岩上、草が一本あってこれを握って下を見ると、深い淵に鰐が口を開けている。握った草を見ると根元を黒白の鼠が食っている)
本当に岸に生えていても、頼りのない草である。(岸は山上の岩のことを言っている)

 八雲御抄に
「いつまで草は壁に生ふる」
とある、儚くて哀れなことである。岩の上の草よりも早く崩れてしまうだろう。漆喰塗の白壁の石灰(いしはひ)などには生えることが出来ないだろうと思うとそれがこの草として具合わるい。

ことなし草は事成し、思うことがあるのかと思うと可笑しい。


橋は
 あさむづの橋 越前国丹生郡。「あさみづ」(浅水)の転か。催馬楽に「あさむづ」という曲がある。
 長柄の橋 摂津国西成郡。歌枕。
 あまびこの橋 飛騨という。「あまびこ」は山彦・天人の意。
 浜名の橋 遠江国浜名郡。歌枕。
 一つ橋 普通名詞か。古今六帖、三「津の国の難波の浦の一つ橋君をしおもへばあからめもせず」(1611))
 うたたねの橋 大和国吉野郡か。
 佐野の舟橋 上野国阿蘇郡。舟を横に並べ板を渡した。
 堀江の橋 摂津国難波の堀江。
 かささぎの橋 淮南子(えなんじ)に「鳥鵲填 呵成 僑度 織女」とあり、七月七日天の川にかささぎが列ねて織女を渡すと伝えられる。天上にならい宮中でもいう。

 山すげの橋 下野国日光の神橋か
 をつの浮き橋 近江国小津または津国屋津か。浮僑はいかだや舟を列ねて浮かべ、僑の代りとしたもの。
 一すぢ渡したる橋 万葉集、十一に「天なる一つ棚橋」(2361)と見える。棚橋は板を棚のようにかけ渡して僑としたもの。
 天なる一つ棚橋いかにか行かむ
   若草の妻がりといはば足飾りせむ
(天にある 一つ棚橋を どうやって行こう(若草の) 妻の許へとならば 足づくろいをしよう) (小学館 日本古典文学全集)

里は