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ひがんばな

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わたくし、美容と健康をかねることでもありますので、自転車で近くをゆったりと走ることが趣味なのでございます。夏が過ぎたと申しましても日向は暑うございますが、幸い木陰の多い道がございますのでその道を進んでゆきました。

自転車は快調に進みまして、大きな【味の素スタジアム】とか申す建物が見えてまいりました。それまで、おひと方、おふた方かたぐらいしかお歩きなられなかった道にたいそうなお方が集まってきてまいりました。もとより興味がございませんので、そのまま進みましてすぐお隣りにございます【調布飛行場】の金網フェンスから滑走路方面を眺めておりましたが、いっこうに飛び立つ気配もございません。

飛行機の飛ばない飛行場をじっと見ておりましても、しょうがありません。ましてやおつむやおみくびの辺りが暑く感じましたので、むさしのなんとか公園というところを横切り、【野川公園】に向かいました。

入口近くに【近藤勇住居跡】などがございます。あら一瞬、土方様だったらなどと思ってしまいました。近藤勇様申し訳ありません。素通りさせていただきます。

野川公園のなかは樹木が多くひんやりして、ほっこりしたわたくしを優しく迎えてくださいました。おもわず、「ごきげんよう」などとイチョウの木に語りかけそうになってしまい、わたくし頬をあからめてしまいました。

その公園は東八道路という道の両側にございます。橋を渡りますと、芝生の向こうに小川が見えてまいります。土手もコンクリートなどで固めておりませぬ絵に描いたような小川でございます。まるでわたくしの心のように素朴で純真なと申し上げておきましょう。その小川に沿うように土の小道がありまして、その道と崖に沿って【自然観察園】という草花の多い場所があります。中には小さな池がいくつかございます。

ツリフネソウという植物がございまして、その黄色であるキツリフネという花を横から撮ってみても、どうも船という気がしません。わたくしの出来の悪いおつむで思い浮かべましたのは太った鯉でしょうか。鯉、来い、恋、なぜか悲しくなってきましたので、先に進んで行きました。

園内を写真を撮りながら、進んでまいりますと、目に赤いものが飛び込んでまいりました。そうです、彼岸花でございます。この場所はあまり知られてないようで、最近増殖しております老カメラマンが少なくて安心いたしました。それでも芸術精神が旺盛なのでしょうか、数人の老殿方はその場をお動きになられませんので、邪魔であることは確かでございます。わたくしは、はしたなくも(どけよ、じじい)などと言葉に出さず清らかである筈の心で思ってしまったのでございます。仕方ないので、わたくしは、ほんの数秒だけ立ち止まりじじいの間からシャッターを押したのでございます。

まあ、そんな風に撮りました写真を表紙にして見たのでございます。結局のところ何を言いたいのか、ただ写真を見せたいのかわたくし本人もわからなくなって途方に暮れております。
作品名:ひがんばな 作家名:伊達梁川