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漢字一文字の旅  紫式部市民文化特別賞受賞作品

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13―6 【鼓】

 【鼓】、左部はまさに「つづみ」の形。右部は「打つ」の意味。
 鼓を打って元気づけることを「鼓舞」。
 世の中が治まり、充分食べられる。腹を打って満足に暮らすことを「鼓腹」(こふく)という。

 こんな生活臭のある【鼓】。
 これが天に昇ると、ロマンチックにも――『鼓星』(つづみぼし)となる。

  木枯らし途絶えて 冴ゆる空より
  地上に降りしく 奇(く)すしき光よ
  もの皆憩(いこ)える しじまの中に
  きらめき揺れつつ 星座はめぐる

 冬の星座、それはなんと言ってもオリオン座。
 このオリオン座の和名こそが――『鼓星』なのだ。

 オリオン座は海の神ポセイドンの子であり、美男子の巨人。しかし、乱暴者の漁師だった。
 すばるの姉妹を追い回したり、動物を虐めたり。そして冬の間、高い所に上がって威張ってる。
 これを見かねた大地母神ガイア、さそり(さそり座)を使って、毒針で刺し殺してしまう。
 これ以降、オリオン座はさそり座が怖い。

 だからなのだ。夏の星座さそり座が東の空に上がる頃になると、オリオン座はそそくさと西の空へと逃げて行ってしまう。
 そんなオリオン座、真っ赤に輝くベテルギウス「源氏星」、青く輝くリゲル「平家星」など、澄み切った冬の夜空に豪華に輝く。
 それは【鼓】を打ち鳴らしたように、いよーてんてけてんと煌めく。

 きっとそう感じたのだろう。
 この日本の、いや、まほろばの古人(いにしえびと)たちは
 『鼓星』――(つづみぼし)と呼んだのだ。