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漢字一文字の旅  紫式部市民文化特別賞受賞作品

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26―6 【七】

 【七】は切断された骨の形。これに「刀」が付いて「切る」になったとか。
 数の「ななつ」の意味になったのは、その音(シチ)が借りられたからだと。

 「五」は木を斜めに交叉させて作った器、その二重蓋の形。これも音の(ゴ)が借りられてきている。
 そして「八」は、左右にものが分かれた形。
 数を数えるために算木というものがあった。これは音ではなく、「八」はその形で「やつ」を表したそうな。

 いずれにしても漢数字、いろいろといきさつがあるようだ。
 こんな漢数字を集めた物語、それが1686年に発刊された井原西鶴の「好色五人女」。
 その四巻に『恋草からげし八百屋物語』がある。
 「恋草」(こいぐさ)とは恋の思いが激しく燃え上がるようす。
 そして「からげし」は京言葉で「消し炭」のこと。

 つまり恋に燃え上がって消し炭になった、あるいは消し炭が再び燃え上がってしまった。物語はどちらでも取れる内容で、一般的に「八百屋お七」と言われている。
 ここでその物語を振り返ってみよう。

 師走、江戸の火事で八百屋八兵衛一家は焼けだされた。避難先の駒込吉祥寺で、娘のお七は小姓、吉三郎の刺を抜いてやる。これが縁で二人は良い仲に。

 時は移り、正月十五日、雪降る夜だった。
 僧たちは葬儀に出掛けて留守、お七は吉三郎の部屋に忍び込む。お七は十六歳、吉三郎も十六歳、若くて初々しい二人ではあったがここに男女の仲、契る。
 だが、お七は翌朝母に引き戻され、そして完成した新宅へと移る。

 その後会えなくなった二人、しかしある雪の日、吉三郎が土筆売りに変装し八百屋を訪ねてくる。そして雪で帰れぬと、土間で泊まることに。
 お七は男が吉三郎だと気付いて、自分の部屋へと隠す。
 その夜、隣室の両親に気付かれないように、筆談しながら恋を実らせる。

 しかし、その後、二人はなかなか会えない。お七はしのび苦しみ、家が火事になればまた吉三郎に会えると考え、火を付ける。
 ここはぼやで済んだ。だが、お七は捕まえられて市中引き回し、その上に火あぶりの刑となる。

 このとき吉三郎は病で寝込んでいた。この出来事を知らない。
 お七の死後百日が経った。吉三郎は治癒して、塔婆にお七の名を見つける。驚き哀しみ、そして自害しようと。
 しかし吉三郎は説得され、出家する。その後は生涯、お七の霊を供養する。

 以上が「八百屋お七」として誰でも知る話しだ。
 だが、井原西鶴はそのタイトルを――『恋草からげし八百屋物語』と付けていた。
 つまり「恋草の消し炭のような八百屋の物語」だと。

 まことに切ない話しだが、井原西鶴はこれで一体何を言いたかったのだろうか?
 その「消し炭」と言わせた真意を知りたくなる。

 とにかく【七】も「五」も「八」も、漢数字に絡んだ物語。そのいきさつが気に掛かるのだ。