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漢字一文字の旅  紫式部市民文化特別賞受賞作品

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14―6 【沌】

 【沌】、右の「屯」は織物の縁の糸を結びとめた房飾りの形で、たむろする意だとか。それに「さんずい」が付き、水が流れず塞がっている状態を言う。

 そして、熟語『混沌』を作り、それは天と地がまだ分かれていないあり様。物事がもやもやしてはっきりしないこと。
 英語では、この事態を「カオス」(chaos)と言う。
 手短に言えば、タバコの煙り。ふうと煙を噴き上げた。しかし、誰もそのもやもやとして紫煙の形を正確に予測できない。
 これがいわゆる――カオス状態だ。

 だが、こんなカオス、つまり『混沌』状態にあっても、原因があっての結果だ。それを科学的に体系付けたものがカオス理論。その中の一つが「バタフライ効果」というものだ。
 ちょっとした原因が大きな結果を生むという理屈。

 「北京で蝶が羽ばたくと、ニューヨークで嵐が起こる」
 マサチューセッツ工科大学の学者が講演でこう主張した。

 しかし、「なんで?」と問い合わせても答は返ってこない。
 なぜなら、未だ「北京で蝶が羽ばたく」と、どうして「ニューヨークで嵐が起こる」かの、それらが結びついていないからだ。
 だが、この理屈、いい加減だとポイと捨てられない。日本にはあったのだ、この「バタフライ効果」なるものが。

 『風が吹けば、桶屋が儲かる』

 風が吹くと、砂が舞い上がって、目に入る。そして、盲さんが増える。
 昔、盲さんは生業(なりわい)で三味線を弾いた。それで三味線の腹になる猫の皮がもっと必要。そのため猫がどんどん捕えられた。
 これで猫が減って、鼠がわんさかと増殖する。あっと言う間に、鼠は桶を囓り、各家にある桶がボロボロに。

 桶を作ってちょうだいと、カミさんが桶屋に走る。
 桶屋のダンナ、「ヨッシャー、マカセナサーイ」と……大儲かりとなる。

 だから、『風が吹けば、桶屋が儲かる』
 これぞ――『混沌』のバタフライ効果。

 まことに【沌】が――桶(OK)となる。