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このホテリアにこの銃を (下)

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16 単純なこと



あの建物が
行き止まりでさえ
なかったら
見かねて追った
僕を避け
君はどこまで
逃げただろう

年がら年中
身を粉にして

客の身分に
あぐらをかいた
人間の屑の
顔色ばかり
うかがって

挙げ句の果てに
愚にもつかない
難癖つけて
面罵され
おぞましい
侮辱の数々
浴びせられても

口応えもせず
唇噛んで
下を向くのが
ホテリアなのか?

そんな馬鹿げた
むごい務めが
君の仕事か?

健気にも
仕事好きにも
程がある
いくら何でも
正視に耐えない

「僕の視線に
気づいたとたん
足が自然に
逃げ出すほど
自尊心は
限界なのに
なお性懲りもなく
ホテルが大事?

ホテルごときに
どうしてそこまで
意地を張る?
そこまで意地張って
何になる?」

不憫すぎて
歯がゆくて
声を荒げて
問いつめたけど
君はひるみも
しなかった

「好きで選んだ
私の仕事
たったあれしき
耐えるうちにも
入らない
それくらい
仕事もホテルも
宝物

あなたこそ
どうして無理やり
奪いたがるの?
あなたには
宝物でも
何でもないのに

買収を
諦めるという
選択肢は
これっぽっちも
ありえない?

あなたがもし
諦めてさえ
くれるなら」

そこまで一気に
叫んだくせに
恨めしげに
僕を見上げて
口をつぐんだ

僕がホテルを
諦めたら?
続けてごらん

「代わりに君が
僕のところへ
来てくれる?

何もかも
ホテルも捨てて
僕のところへ
来ると誓える?」

断言するなら
したっていい

そんなこと
君には到底
できっこない

君にとって
ホテルは家で
仲間は家族も
同然だから

そしてまた
あの男がまだ
心の中から完全に
消えてしまっては
いないから

だから
そんな度胸は
君にはない

だとしても
諦めない
君だけは
どうしても
諦めたくない

だからこそ
このホテルを
君ごとそっくり
手に入れる

それしかないだろう?
邪魔なんか
誰にもさせない

単純なことだよ
ジニョン

「どうしても
君がそこから
動けないなら
君が今
立ってる場所を
僕のものに
してみせる」

最後まで
苛立って
君に向かって
言ったのか
自分自身に
言ったのかすら
定かでない

返事を
期待した
わけでもない

絶句したまま
立ちすくむ君を
置き去りにして

ぶっきらぼうに
その場を離れた