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源内倶楽部 3

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 一人の浪人が棍棒を振り上げて林太郎に襲いかかろうとした瞬間、小石が飛んできて浪人の頭に命中した。
「だっ、誰だ!」
「喧嘩はいけねーよ、それともお侍さん達は追い剥ぎかい」
 伊左次が小石を手の中で転がしながら現れた。
「何をする邪魔するとただではすまぬぞ」
 浪人は刀を抜いて伊左次達に凄んで脅しをかけた。
「邪魔じゃねー、おせっかいだよ。仲裁は時の氏神って言うじゃねーかぃ」
「斬るぞ!」
「そんなへっぴり腰じゃー。無理だよ」
「黙れー!」
 浪人が伊左次に切り掛かる。他の浪人達も刀を抜いて三吉達に切りかかろうとした。
 次の瞬間、伊左次や三吉達それに豊吉も加わり、浪人達目掛けて一斉に小石や土を投げ付けた。
「なっ、何をする!」
 浪人達は不意をつかれて怯んだ。頭を手で押さえてしゃがみこむ者、土のめくらまし攻撃に視界を奪われ目を押さえる者と皆戦意喪失。
「やっちまえー!」
 ここぞとばかりに、真っ先に三吉が浪人達に向かって飛び掛かった。他の臥達達も遅れまいと飛び掛かった。
 もうこうなったら勝負にはならない。浪人達はあっという間に打ちのめされてしまった。

「大丈夫かのー」
 帰雲が心配そうに前方の闇の奥を見つめている。
 浅右衛門も無言て見つめる。
「私が見て参りましょうか」
「そうじゃのう」
 蔵造が浅右衛門の気持ちを察して、様子を見に行こうと歩き出したが、すぐに立ち止まった。
「それにはおよびませぬ様です」
 前方から豊吉が走ってくるのが見えた。
「おお、戻ってきた戻ってきた」
 帰雲が嬉しそうに叫んだ。
「帰ってまいりました、ありがたや」
 浅右衛門もやはり父親である。思わず本音が口から出ていた。
「無事に済んだか」
「はい、済みました」
 伊左次達も林太郎を伴って戻って来た。
「坊っちゃまも大した腕前でございましたよ」
「さようか」
「楽しゅうございました」
「おお、それは良かった」
 浅右衛門の顔が綻んだ。
「そのお方か」
「へぃ、礼なんていいっ申し上げたのですが、お侍様がどうしてもっておっしゃるので」
「申し訳ございません、危ないところをありがとうございました」
「いやいやこれしきの事、お気になさらずとも」
「どなた様かはぞんじませぬが誠にありがとうございました」
 林太郎は駕籠に向かって礼を言った。
 一瞬、林太郎が顔をしかめて腕を抑えた。血が着物ににじみ出した。
「怪我をされている様じゃ」
「なーに、これくらいの傷」
「どれ見せてみなされ、わしゃ医者じゃ、提灯をもそっとこっちにお願い出来るかな帰雲殿」
 怪我と聞いて良信が林太郎の腕の傷の具合を見た。
「大丈夫ではないわい、しかし慌てて出て来て薬箱を忘れてきたのじゃ面目ない」
「それは難儀じゃのう」
 提灯を持った帰雲が覗き込んだ。
 提灯の明りで帰雲の顔が闇に浮かび上がった。
「もしゃ、帰雲様とはあの遠山様では」
「あっ、いやー」
「いいじゃねーかばれちまってんだから、あんたは人気者だから仕方ねーよ」
 駕篭から源内が背伸びをしながら出て来た。
「ご隠居」
「大丈夫だよ、ずーと駕籠じゃたまらねーよ、それにその怪我だ、ほって行く訳にはいかねーよ。家ももうじきだお連れした方がいいよ」
「かしこまりました」
 良信が林太郎の傷の応急処置を終えると、源内達はまた歩き出した。
「お侍、大事なものでございましょ、そのお怪我では、お荷物お持ち致しましょう」
「かたじけない、西洋の書物だから少し重いぞ」
「こいつは片手じゃ無理だわ」
 林太郎が荷物を伊左次に手渡した時、良信が書物と聞いて覗き込んだ。
「ほほぅー蘭学ですか」
「はい、お分りですか」
「いゃいゃほんのかじった程度じゃよ」
「それにしても物取りではないようだが心当たりでもおありかな」
「蘭学などしていると何かと目の敵にする連中がおりますから」
「新しいものをやろうとすると敵が多いのは今も昔も変らねーって言う事よ。わしもな・・いゃいゃ」
 駕籠の中で話を聞いていた源内が呟いた。
作品名:源内倶楽部 3 作家名:修大