小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」
ろーたす・るとす
ろーたす・るとす
novelistID. 52985
新規ユーザー登録
E-MAIL
PASSWORD
次回から自動でログイン

 

作品詳細に戻る

 

便利屋BIG-GUN 1 ルガーP08

INDEX|18ページ/28ページ|

次のページ前のページ
 

 俺の宣言にジュンは脹れたが、その後「ナチュナルな感じの方がキャラに合うだろ」と付け加えると思いのほか素直に同意した。
 あれこれ、とかしたり分けたりした後かつてのルンペンスタイルボサボサ頭はワイルドスタイルボサボサ頭で落ち着いた。うむ…なかなかかっこいいぞベン。ジュンに頭をいじられている間やつは真っ赤になって黙りこくっていた。緊張とテレとくすぐったさと感激が入り混じっていたのだろう。今まで女の子に頭触ってもらうなんて経験なかっただろうし。
 待て、よく考えたら俺も無いぞ。
「ジュンよ、俺の髪型はこれでいいと思うか」
「うん、いいと思うよ」
 ジュンは素っ気無く即答した。こっちを見もしなかった。完全アウトオブ眼中。俺は髪型なんか今まで気にしたことは無かった。床屋に行っても注文は常に「普通で」だった。だから俺の髪型は極めて普通である。たまにはものすごいのにしてイメチェンしてみようかな。だからジュンちゃん、ちょっとはなんか言ってよぉ。
「何しに来たのよ」
 なんか言ったと思ったらこれだ。
ジュンの失礼な発言で俺は用事を思い出した。
「俺今夜三郎と出かけなきゃいかんからボディガードはベンと交代な」
「うん、いいよ」
 またベンの頭に夢中なまま即答した。だからちょっとは寂しそうにいってよぉ。
「ベン、任せられるか? かなり厄介な相手だが」
 傷ついたハートを隠しつつ真面目に話を続ける。ベンは元々真面目な人間なのでちゃんと答えてくれた。
「かかか必ず守るな」
「うん、頼むぞ。銃持ってるか? 必要だぞ」
 あるよと指差したテーブルの上にリボルバーが置いてあった。
 何の変哲も無い短銃身の中型拳銃。かなり古びているのはともかく俺でさえメーカーがわからない三流機だ。チンピラが土曜の夜に物陰から人を脅すのに使うくらいしか出来ないガラクタ。一般的に「サタデーナイトスペシャル」と呼ばれる類の銃だ。
 まあベンにこれ以上似合う銃はあるまい…… が。今は事態が事態だ。弾が出るのかどうかすらわからん銃では心もとない。俺は持ってきたアルミケースを置いてふたを開けた。
 青光りするリボルバー拳銃が二つの予備弾装クイックローダーと共に収まっている。
S&W M13。同じリボルバーではあるがこいつは一流メーカーS&Wの正規物だ。S&Wのリボルバーとしては下から2番目の大きさの銃で、基本的に有名な38口径リボルバーM10をより強力な357マグナムも使えるようにしたものだ。こいつは2インチモデルで簡易的な照準器しか備えていないが接近戦なら何も問題はあるまい。いや問題どころか、こいつは軽さ、信頼性、使いやすさ、ルックスに優れた、ダブルアクションリボルバーとしては完成の域にある傑作銃といえるだろう。
「これ使えよ、そんな銃じゃ当てにならないぜ」
 しかしベンは顔を曇らせた。なんとなくだが予想はしていたが。
「おおおお俺はこれでいいよ」
「使い慣れたのを使いたいのはわかる。だけど今回はこれを持ってけよ」
 俺はベンの手の中にS&Wを叩き込んだ。ベンはまだ納得していない様子だったが口論しても仕方が無い。
「頼んだぞ、ベン」
 俺はもう一度強い口調で言った。それにはベンもうなずいてくれた。俺はそのまま背を向けて部屋を出た。ジュンが何か声をかけてくれるかと期待したが、あいつはまたベンのコーディネートに話を戻していた。

 俺と三郎は夕方合流、一仕事終えた後日が暮れたころ街の南端に位置する高級ホテルに到着した。
 この街きっての高級ホテルであり、場所も海沿いで海岸線の中心地。なによりその形状からこの街の、いやこの海岸のシンボルタワーとして君臨している。
 その名も「パークホテル」だ。
 高さ的には15階くらいの建物だが、このホテルには何階という概念が厳密には通用しない。中央に突き抜けたブロックがあり、それを取り巻くようにフロアが螺旋状に上がっているのだ。外から見た姿は例えるならサザエの貝殻。あるいはこの街のもう一つのシンボル、海に浮かぶ岩「烏帽子」に似ているような気もする。何しろ目立つので目印としても役に立ち街のみんなに親しまれている。
 だがしかし。中に入るのは初めてだ。多くの市民が入ったことはあるまい。そのくらい高級なリゾートホテルなのだ。
 ここに鈴木峰子女史が現れると三郎は確かな情報を得ていた。
 今夜ここで闇カジノが開催される。夫とは別個のビジネス(化粧品だ)で稼ぎまくり政財界にも顔が利くこの婦人はギャンブル好きらしい。たびたびこういう場所を訪れているところを目撃されている。さりげなく近づくには絶好の機会だ。
 俺達はビシッとしたスーツに身を包みランドクルーザーで颯爽と乗り付けた。何故プジョーでなくランクルかと言えばかっこいいからである。
 闇カジノなので未成年はおろか関係者以外完全シャットダウンだ。表の看板には「鍵エンタープライズ主催 有力支援者様晩餐会」と書いてあった。
 で、俺達はというとちゃんと主催者様からの正式な招待状をゲットしている。
 鍵エンタープライズは言うまでも無く鍵さんの会社である。鍵さんに電話したところ事情も聞かず快く招待状を送ってくれた。このご恩はその内返さなきゃいかんだろうな。
 会場はホテルでも一番広いホール。入念なチェックを受けた。正式な招待状であるにもかかわらず丁寧に「電話で確認してもよろしいでしょうか」とまで言われた。俺の顔をしらんとはまだまだだな、このボーイ。
 中に入るとすでにカジノは始まっていて中々の盛況ぶりだった。俺でも知っているような政治家、会社役員、そしてやくざの大物達がゲームを楽しんでいる。
 さて…… ターゲットは、と。
 俺が辺りを見渡そうとすると三郎が音も無くスッと歩き出した。後ろから見るスーツ姿の長身はとても俺と同年とは思えないほど大人びて見えた。何が違うんだろう。着こなし? 物腰? オーラ? ジュンならなんと答えるだろう。つい見とれてしまうほど絵になる後姿だった。
 やつの向かう先はポーカーのテーブルだった。そこにターゲット「鈴木峰子」はいた。歳は48歳。化粧品会社の社長を務めるキャリアウーマンだ。よほど金かけてるのか肌つやがよく歳より若く見える。会社経営の夫を持ちながら自らもバリバリ稼いでいるところから気性も強いのだろうと思われる。外観にもそんな様子が伺われる。
 それにしても俺より先に見つけるとはさすがだ。どうもこいつには何をやっても敵わない。まぁ天才という人種なんだろう。
 三郎はすぐ声をかけず後ろから峰子のゲーム振りを観察していた。俺は邪魔せず、少し離れたところから両者をながめる。どうも負けがこんでいる様だ。イライラとゲームの合間にカクテルをがぶ飲みしていた。
 三郎が動いた。モデルのように優雅に滑るように峰子の横に移動した。
「そのアルコールの飲み方では勝負に差し支えますよ」
 やんわりとした口調で話しかける。気が立っていた婦人は何よとばかりに振り返ったが、思いのほか若く二枚目の顔がそこにあったので表情を少し軟化させた。
「ゲームは楽しく勝負は勝たなければ、ね」
 絶妙の間合いで続ける。突然の王子様の登場に海千山千のおば様も浮き足立った。
「あなたは?」