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黄金の太陽THE LEGEND OF SOL 19

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第68章 心の流れ


 一切の光の射さない、暗黒の空間にて、赤黒い眼光を発して立ち尽くす男がいた。近くには、その男と瓜二つの姿の者が横たわって、眠っている。
 圧倒的力を持ち、破壊、殺戮の衝動だけを糧として生きる、悪魔も恐怖する暗黒のロビンは、外界で最後、シンに言われたことを回想していた。
 ロビンの心の奥底に宿る、破壊衝動が顕現した存在、それが赤い眼光を放つロビン。
 暗黒のロビンと普通のロビン。この二人の命は別物であり、暗黒のロビンは、いつか自らが本当のロビンという存在となるのだ、そう考えていた。
 傷物の体を得ることを良しとしない彼は、普通のロビンが死した後、肉体を得るのではなく、死する寸前に顕現することで、体も全て我が物としようと思っていた。
 しかし、これまでに三度、ロビンは死の危機に瀕したが、そのいずれも肉体を得ることに失敗していた。
 命を別物としながらも、本質はやはりロビンの方にあるのか、途中で目を覚ました彼に邪魔され続けてきたのだ。
 本質はロビンの方にあり、そして圧倒的力を持つ、暗黒のロビンは、シンの言っていたように、ロビンの感情の一部分だとすれば、これまで彼に静められていた理由が分かる。
 シンの言うとおり、暗黒のロビンが、ロビンの破壊衝動の一部ならば、彼が必死になってその感情を抑えようとした結果、静められるとするならば辻褄があう。
 更に、暗黒のロビンにとって、都合の悪いことが起きる可能性が生じた。
 もしも、これまでのことが本当ならば、ロビンの死は、暗黒のロビンの死、もしくは永遠に消えることに繋がる。
 暗黒のロビンの存在意義が、ロビンの心だとするならば、感情を持つことが不可能となるロビンの死は、彼の感情の一部分に過ぎない暗黒のロビンは、二度と外界へと出ることが不可能となるのだ。
 シンによって提示された言葉は、暗黒のロビンに迷いを与えたのだ。
 今ここに眠るロビンを殺し、果たして体を手に入れることができるのか。
 完全に認めたわけではないが、暗黒のロビンの存在が、ロビンの破壊衝動だとすれば、源足り得るロビンの心が無くなること。つまりは、ロビンが死んで、その瞬間、感情を持たない肉塊となったのなら、暗黒のロビンも死ぬことになる。
 暗黒のロビンは、シンの言葉を思い出し、自らも消える可能性をも考え、目の前に横たわるロビンを見つめることしかできなかった。
ーーオレが、オレこそが……!ーー
 暗黒のロビンは右手を突き立て、横たわり眠るロビンの喉仏を潰し、文字通り息の根を止めてやろうとする。しかし。
ーーお前は、ロビンの破壊衝動が顕現した存在だーー
「……くっ!」
 シンの言葉が脳裏にて響き、暗黒のロビンは寸前で手を止めてしまう。
 何を恐れる事があるというのだ。
 暗黒のロビンは自らを叱咤する。しかし、恐怖の要因が分かっているせいか、ロビン共々消えることを恐れ、ロビンを殺すことができないでいた。
「何を恐れる!? オレがロビンだ!」
 暗黒のロビンは一人、叫び声を上げた。そしてもう一度ロビンを手にかけようとする。
 しかしその手はまた、ロビンの首に触れるか否かの所で止まってしまう。
 これは、暗黒のロビンがロビンの感情の一部分であり、ロビンの心が、暗黒のロビンの行動を自決と判断するが故の、防衛反応であった。
 ロビンの心がある限り、暗黒のロビンは絶対に一人の人物とはなり得なかった。そして、二人の命は別物でありながら、暗黒のロビンには破壊衝動しか感情がない。これはさらに、完全な人としては存在できないことを意味していた。
ーーオレは……ーー
 暗黒のロビンは、突き立てる指を緩め、立ち上がり、己が手を見つめる。
ーーオレは一体なぜ存在するのか……ーー
 破壊しか考えない暗黒のロビンは、本来持ち合わせないはずの感情に支配されていた。
 シンによって与えられた葛藤の感情である。
 ロビンを殺せば、心の本質の持ち主が消えることにより、自身も消える。もしくは、何らかの要因でロビンになれたとして、破壊の限りを尽くせば、やがてたどり着くのは、全くの無である。
 暗黒のロビンは、ロビンの息の根を止めることなく、彼が目覚める時まで、暗闇に悩み、葛藤して立ち尽くすのだった。
    ※※※
 時の流れの違うレムリアを離れ、ロビン達は外界へと出ていた。
 レムリアでの一日が、ウェイアードにおける、一週間に当たるため、修練の為の時間をじっくりと取る目的によるものだった。
 ロビンや、ガルシア兄妹の両親はまだ、目を覚まさない。体力を消耗している彼らは、瘴気の影響を大きく受ける可能性があったので、レムリアの医師に預けて旅立つことにした。
 彼らが気がついた後の応対は、ピカードの叔父、ウィズルがする事になった。
 すべき事を終え、ロビンと仲間達は、ハイディアの地へと来ていた。
 ここは霊峰アルファ山と、神聖なるソル神殿があるためか、瘴気の影響が非常に少ない。そのため、修行にはお誂え向きの場所であったのだ。
 使命感からか、ロビンやガルシアらハイディア村の民は、村へ帰ることをよしとしなかった。
 村から遠く離れた場所で、野営をしながらロビン達は修行に励んでいた。
「えい!」
「やっ!」
 ロビンとジェラルドは、互いに実戦形式の鍛錬を行っていた。
 ロビンはガルシアから借りた聖剣を、ジェラルドは漆黒の暗黒剣を振るっていた。
 二人が行っているのは練習試合ではあったが、使用しているのは真剣である。
 馴れ合いの練習では、すぐに力を得ることはできないので、命のやりとりの中、常に極限状態でいることにより、これは確実かつ飛躍的に腕を上げられる修行であった。
「やっ、は!」
 ピカードは技の型を確認しながら修行する。
 ピカードの修行は、彼の徒手空拳を、腕力に頼り切った力ずくのものではなく、体の正中線を駆使した、全身を一体化させたものとするためであった。
 そうした意識を持ち、技を確実なものとするために、あえて実戦的な事はせず、正しい型を身に付けるべく、ひたすら基礎的な鍛錬を積んでいた。
「…………」
 ガルシアは、黒い魔道書を開いて脚の上に置き、草の上に座し瞑想している。
 チャンパ村にて、黒魔術にも精通するパヤヤームの祖母によると、魔道書に綴られた魔術は、全部で十三あるとのことだった。
 ガルシアが読めるようになった魔術の総数は、十を超えた。後は修行僧のごとく、瞑想することで新たな魔術を悟る為に、心を静め、精神統一に打ち込んでいた。
 皆それぞれが打ち込む修行は、全てヒナの指示に基づいたものである。
 レムリアにて彼らと直接戦い、力通眼を通して、彼らが最小限の修練により、短期間で強力な技術を身に付けられるよう、一人一人に指導したのだ。
 その指導者は今、イワンに付きっきりで修行していた。
『ブレイン・コネクト!』
 イワンはヒナに向けて、指先から光線を放った。光線はヒナに当たり、その瞬間、イワンにヒナの思考が水のように流れてくる。
 イワンは同時に、刀を手にし、体に電気の光輪を纏った。そして、ヒナの脳と繋がったことを宣言するかのように、イワンはヒナが考えていることを口にしてみた。