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ヤマト航海日誌

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そういうことになるものである。朝日ソノラマ編集者は、あれを読んでも「その飛行機って、具体的にどのくらいの大きさなんですか」と聞きもしなかったか、知っていながら「いいっすねえ。それですよ! そのくらいやんなきゃダメですよ! それでこそプロ! それでこそ一流!」と笹本に言ったかどちらかであろう。いずれにしてもロクな〈マネージャー〉ではない。

それにどうせCGで描いても重みなんか全然感じられないんだ。山崎貴にやらせても、『永遠の0』や『リターナー』と同じくフワリ、ピタッとやるんだろう。音ばっかり『グオーン』でもよう。

小説の描写自体がなんだかそんな感じだし。モスラのような飛行機が無理矢理着陸する感じが読んでまったくすることがない。文章がヘタなだけかもしれないけれども、一体何がおもしろいと思ってあれを人に出せるんだか……。

まあ、それでも、困ったことに、おもしろいのはおもしろいんだな、『カーニバル・ナイト』。『スター・ウォーズ』の中でいちばんおもしろいのは『帝国の逆襲』と言われるように、スジを追わずに和沙結希だけ食いついて読めば『妖精作戦』の中でいちばん『カーニバル・ナイト』がおもしろい。漢(おとこ)なら三百回でも読んでしまえる〈スタンレーの魔女〉だ。けれども和沙結希を抜いたらまったくの紙クズだから、山岳信仰なんか持たない普通一般男性からは「何がそんなにいいんだ?」と言われる。

それが〈バイブル〉というものである。ドラッカーのなんとやらいう本だとか、マルクスの『資本論』という本だとか、ヒトラーの『我が闘争』だとかみんなそんなもんである。理想でものを言ってるだけの荒唐無稽なたわごとの羅列だ――なんてなことを書いてると、どこからともなく、お前は何を長々とくだらんことを書いてるんだという声が聞こえてくるような気がする。

このログは『ヤマト』とぜんぜんなんの関係もないじゃないか。いや、それは許すとしても、一体どうして三十年以上も昔の〈プレ・ラノベ〉の一冊についてムキになる必要があるのかと。オレはその本が出たときに生まれてすらいないんだからどうでもいいぞという声が聞こえてくるような気がする。それは〈昔の作品〉と言えば『ヤマト』こそ『妖精作戦』よりもさらに十年昔のものだが、それにしてもなんで『カーニバル・ナイト』なんだ、という……。

うん、まあ、それを聞かれたならば、確かにそうだと言うしかないことではあるが……どうせこの三十年に十万冊のラノベが出ながらあの〈ジャヤ〉の二合目に届くものさえただの一冊も書かれちゃいないんだろう、まして〈エベレスト〉など。ラノベ書きなど全員が〈高尾山〉に登って満足してやがる腑抜けなんだろと言いたい気持ちもないわけではないのだが……。

しかし実はおれも意味なくこんなことを書いてるわけではないのだよ、君。これには君の頭ではわからんような意味があることはあるのだが、君の頭ではわからんだろうから教えない。ただそれだけのことであって、意味はあるのだ。もし君が、おれの見込みと違って頭のいい人間ならば、ここでおれが書いてることの意味に自分で気づくだろう。まあ無理とは思うんだが……。

どうせ君、こうも考えてるだろうしな。笹本祐一が二流と言うならお前はなんなんだ、とかさ。他人(ひと)の仕事にケチつけるのは誰でもできらあ。お前、そこまで言うんなら、言えるだけのことやってみろよ。ええ、どうだ、できんのかよと。お前の言う〈本当におもしろいもの〉というやつを、書けるもんなら書いて出してみやがれと。偉そうなことを言うのはそれをやってからにしろと。

ハッ、できるか。できねえよなあ。予知とか、男の対決とか、拳銃と格闘だけの闘いとか、市街戦とかドッグファイトとか、そういうものをちゃんとリアルに辻褄合わせてカッコいいアクション・エンタテイメント小説に仕上げて出すなんてこと、お前にできるわけねえよなあ。それができたらそりゃあ一流でございましょうが、お前にできるわけあるもんか、と。そういう話になるよな、まあ。それはわかってるんだけれど。

けどね。もし書いたとしても、君になんかおれが読ませてやると思うか? いいや、読ませんよ。冗談じゃないね。君は他人が書いて出したものをコピペして、「オレが書いたものだ」と言って舎弟に読ます〈沖田〉だろ。女を強姦する野郎とおんなじだ。そんなのはおれの友じゃない。そうだ。もちろん、君が〈心の友〉なんて、ほんとは全然思っていない。なのにおれのオリジナルを、君なんかに読ませるもんか。

それが当たり前だろう。おれは以前に横浜の港を歩いていたら〈赤レンガ倉庫〉の前で大道芸をやっているのに出くわして、思いがけずに素晴らしいショーを楽しんだことがある。で、喜んで財布から千円抜いて袋に入れた。そこで見ていた半分くらいがおれと同じく千円くらい差し出していたが、君は違うな。終わったところでサッと背を向け去って行った半分の仲間だ。そうだろう。

気持ちよくカネを出してく人間のことを見下して、「バカだなあ、あいつが勝手に見せたもんにカネ出す必要ないじゃないか」と言って頭がいいつもりでいる。そういう人間のひとりだろう。「だいたい自分はいずれ超能力に目覚めてあんなのよりもっとすごいことが練習せずともできるようになる人間なのだから、才能を努力で伸ばす人間を讃えるのはプライドが許さない。プラモ作りや萌絵描きの才能ならば認めてもいいけど」てなこと言って偉い気でいる。そういう人間のひとりだろう。

君はおれの友じゃない。君はその翌日に〈出渕〉と〈笹本〉という名の先輩に呼び出され、「集団万引の仲間に入れてやるよ」と言われて喜んでノコノコついてく。そういう人間のひとりだろう。それが君の考える〈選ばれし者〉ってやつなのだろう。おれは決してそんなやつをおれの友に選びはしない。


「万引は単独でやると危険だが複数でやれば大丈夫。オレ達がここで見張っていてやるから、コレとコレとコレ盗ってこい」


〈出渕〉と〈笹本〉にそう言われ、感動して指示に従う。『ああなんていう頭のいい先輩達だ。〈タンドク〉に〈フクスウ〉だって。カーッコいい! もう一生ずっとボクはこのふたりについていくゾ』。そんなことを本気で思う。〈出渕〉と〈笹本〉は、『ヤバい』と見たら君を見捨ててササッと逃げる気でいるのだが、バカだからそんなことに気づかない。君はそういうやつだろう。

そしてもちろん、現実には、店を出ようとするところを警備員に囲まれて「ちょっとキミ達」となるわけだが、そのとき「違う! オレ達はただの冗談でコイツに『やれ』と言っただけだ! まさか本当に万引すると思わなかった!」と叫ぶ。それが〈出渕〉と〈笹本〉なのに、それでもまだ気づかない。君はそういうやつだろう。

バカめ。そんなチンカスは、おれの〈心の友〉じゃない。君は次には輪姦集団の仲間に加わるのだろうし、その次には振り込め詐欺団だ。「オレ達がついているから大丈夫」。そう言われていつもいちばん危険な役を〈出渕〉と〈笹本〉に押し付けられる。なのに君は毎度毎度、ぜんぜん気づかずホイホイ喜んで従うんだ。
作品名:ヤマト航海日誌 作家名:島田信之