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ヤマト航海日誌

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2016.6.14 エロマンガ島のミミズ男



エメリッヒ版『ゴジラ』について〈○○よりはマシ〉だとか〈××よりはおもしろかった〉とおれはさんざん書いてきたが、しかし比較の問題だよ。おれはあのイグアナ映画を傑作と呼んだつもりはないからね。

エメリッヒ映画の特徴としてとにかく主人公がいかん。『M:i:III』のトム・クルーズや『トゥルーライズ』のシュワルツェネッガー演じるスパイが妻に対して偽っている仮の姿みたいな男をなぜ主役にするのだろう。

『ゴジラ』の場合はミミズ学者! 世界じゅうを飛び回り、シャベルで土をセッセと掘って、今日はロシアのロシアミミズ。明日は朝鮮のコリアミミズ。スケベニンゲンのスケベニンゲンミミズ。一体、他に、選ぶ仕事はなかったのかあっ! そう聞きたくなりますよね。

『スターゲイト』では古代文字学者。《進》という文字を示して、『これは「シン」と読む他に、「ススム」と読むこともできるのです』だとか言ってる。ああそうっすか。『ID4』ではなんだっけええと、あまりに地味で忘れたけど、MIT出ておきながらハエの繁殖かなんかやってて、『このエイリアンはハエと同じだ!』とかなんとか言うんだっけ。

で、極めつけがまた題名忘れたけど、『ホワイトハウスがちょーん』だか『えんがちょホワイトハウス』だかいうの。このあいだテレビでやったの録画して見てさ、これが主役とわかる男が『ボクはどうしても大統領警護官になりたいんです』と言った瞬間さすがに消したよ。そんな職種を自分から選ぶ男の気持ちがまるでわからない!

シークレットサービスだあ? そんなのは金持ちのお坊ちゃんだけがなるのが許されるブランド職業だろうがよ。長男マモルは家の跡を継ぎ、次男ススムはシークレットサービスに。『イザとなったら大統領の盾になり国を護る仕事です』なんて言っても本当にそうなって死ぬ確率は、紛争地帯に送られる下っ端兵士の百分の一。交通事故で死ぬ確率の一分の二。銀のスプーンくわえて生まれた〈選ばれた人間〉が、そうと知ってて親のコネで就く仕事だろうが、そんなのは、ええ? 〈ぶっちゃん古代〉みてえな恵まれたやつがよお!

主人公を優秀ながらパッとしないやつとするのはエンターテインメントの王道だ。普通ならおれはそういうの大好きである。すごい才能持っているのに運やチャンスに恵まれず不遇をかこっている人間は応援したくなるのである。『トリポッド』のように大変な傑作なのに人に知られてない本は広めたくもなるのである。

でも、なんか、エメリッヒが描く主役は違うよなあ。世界各地を飛び回るエリートだけれど言うことが、『ボクはミミズの権威なんです。ミミズの写真、見ますか?』って、どうリアクションすればいいのか。ミミズ男に君は共感できますか。感情移入できるでしょうか。

おれは無理です。とても無理です。確かに全員、大変に優秀なのはわかるんだけど、そんな分野で優秀だからどうしたとしか見ていて思えないのがねえ……。

テレビのドキュメンタリー番組でよく、オウム真理教の幹部ものがあるじゃんか。『将来を嘱望された超エリートがなぜカルトに惑わされたか』なんつって、ドレドレと思って見るとこれがまた、どいつもこいつもすげえ地味な分野における秀才で、ねえ君、思ったことないですか。『うわー、エメリッヒ映画の主役みてえ』って。おれはあります。とてもあります。


オウム真理教幹部になんか感情移入できねえよ。


ゴジラが日本のゴジラと同じかそうでないかなんていうのはおれにはどうでもいいことである。渡辺謙も学者なんか演るよりも、主役を助ける熱血トラック運転手とか演じてほしいものである。戦車やヘリがかなわなかったゴジラにデコトラが挑む! ああ、見てえなあ、そんな『ゴジラ』。そんな『ゴジラ』なら見てえなあ。

ま、庵野には無理だろうな。エメリッヒ版『ゴジラ』はそんなに悪くないとおれが言うのはそういう意味だ。山崎貴も庵野よりは『ゴジラ』がやれそうとおれが言うのはそういう意味だ。話を『エイリアン2』にするというのは、決して、釈由美子を〈メカゴジラ〉に乗せて『カモーン!』と叫ばせるという意味ではないのである。

なんだっけ、おれが前にこの日誌で、『古代進がこれからほんとの主人公になる』と書いた後かな、一時的にちょっとだけアクセスが増えたことがあったけれども、あれは何? 皆さん、ひょっとして〈コスモゼロ〉で古代が飛び出すと思ったわけなの?

違うよ。そんな意味じゃないよ。今のオタクは〈主人公〉と言えば、超能力や超兵器を与えられ敵をバンバンやっつける役としか思わないのかなあ。こっちはそんな気なかったからあのときはちょっとビックリしたよ。『えっ、これで増えちゃうの?』って、ホント予想外だった。君達、よくよく、程度の低いものしか見てきてないんだろうが。

まあ、無理もないかもなあ。今の日本に〈本物〉なんてそもそも存在しないんだから、見たくたって見ようがないか。だからどうしようもないものしか、知らなくって当然か。

超能力で勝とうとする。または道具に頼ろうとする。いやまあ決して日本人に限ったことでもないだろうけど、それにしても君達、そんなの、オウム教徒の考え方と同じだとはわからんのか。

ダメなんや。男はそんな、野比のび太のようではいかん。『ダイ・ハード』で『スピード』で『エイリアン2』な話を作るというのは、決して、沖田艦隊が百隻で向かっていって勝てなかった冥王星に、古代がタッタ一機の〈ゼロ〉でチョチョイのチョイと勝つということではない。そんな、出渕裕でも作れるような話を見たり読んだりしてはいかん。それじゃハエと同じやで。ミミズ男になってしまうで。君はそれでええのんか。

前回のログの記述をまた勘違いするやつが出てはいけないと思うので念のために書いておくが、おれが話を『ダイ・ハード』で『スピード』で、と書いたのは、〈ヤマト〉のクルーを『ダイ・ハード2』の空港職員とか、『スピード』のバス乗客とか、『エイリアン2』の海兵隊員のように描く、という意味である。それでこそ話がおもしろくなるのである。乗客がみんな普通の人間なのに魅力があるからアニーがバスをジャンプさせられるのか見ていて手に汗握る。そういう意味だよ。間違わないでね。

『うしおととら』のキャラにしても、おれが本当に好きだったのは香上(かがみ)と片山(かたやま)だったなあ。どっちがどっちかわかんないけど、でもあのふたりがいちばん好きだ。普通のアンちゃんが熱血走りで根性見せる。それでこそ、見ている側が『ユー・ザ・マーン! トビタカズヤ! ムロヤヨシヒデ!』となろうというもんでしょう。

なのにどうも、そこがイマイチ、今度のアニメはそこがちょっとわかってないんじゃねえかというのが――まあとにかく、室屋選手、先日の千葉は最高でした。見ていて手に汗握りましたね。会場に行って直(じか)に見た人が羨ましいですね。一生忘れられないでしょう。
作品名:ヤマト航海日誌 作家名:島田信之